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三十七話 異世界装備と水

 ベルカンプが砦に帰ってくるとカーンとソシエが選抜したメンバーが揃っており、ベルカンプは12名に盾を改良させるよう、オルドの鍛冶屋に向かわせた。

 残りのメンバーとベルカンプの自宅に向かうと、地球から送られてきた品物を机に並べ始める。


「ほ~……。これが異世界の品か。使い道のわかるものからわからん物まで色々あるんだな」


 カーンがスプレーの缶を摘まむと首を傾げる。


「こっちから指示したものじゃなく、偶然こっちに引き抜いた物だから対した物は特にないけどね、それでもいくつか使えそうなものがある。出し惜しみしてる余裕なんか無いから必死だよ」


 そう言うと、まずはとカーンが履いているブーツを脱がせた。


 ベルカンプはそのブーツを持ち上げると、

「おもっ!」

 とすぐにブーツを床に置いた。


「丈夫さを求めるとどうしてもな。だが5年履いてるがまだ底に穴は開いてない」


 そう言うと、これを履けって言うんだろ? と目の前のスパイクを持ち上げた。


「軽いな。異世界の靴ってのはこんな形状なのか? 紐で縛るのか、面倒だな」


「それはね、サッカーって言う足で球を蹴る競技の有名な選手から貰ったんだ。カーンと同じぐらいの身長だったからサイズが合えばいいんだけど……」


 栄太が小学生の頃、地元のJ2リーグで活躍していた助っ人外国人DF、ベレイラのサイン入りスパイクだった。

 某国民的サッカー漫画、立花兄弟のスカイラ○ハリケーンが大好きだったベレイラは引退試合で双子の祝井兄弟を見つけると、サインを書いてユニフォームとスパイクをプレゼントしてくれたのであった。


 願うようにカーンの足に合わせると運よくぴったりのサイズであったので、ベルカンプは胸を撫で下ろしながら紐を結んでやると、カーンは足踏みを始める。


「なんだこりゃ! まるで履いてねぇみたいに軽い。これはいい。踏み込むのに少しも重さを感じねぇ」


 いたく気に入ったカーンが何度も足踏みして感触を確かめると、ちょっとだけ走ってくると扉を出て行ってしまった。

 その間にソシエに湯を沸かしてもらい、味塩と氷砂糖の分量を指示する。



「おい小僧! これはいい、本当にいいぞ」


 戻ってきたカーンを座らせスパイクを脱がすと、今度は中学生時のストッキングを何度も何度も伸ばして、なんとか履かせる。


「靴下か? これはちょっときついな。別に裸足でも俺はかまわないんだけどな」


 そう言うカーンの(すね)に脛当てを滑り込ませると、ベルカンプはトゥーキックで思いっきりカーンの脛を蹴った。


「いっっっっっ…………おまえ子供でもそれ…………痛くない」


「どう? これでも靴下履かないで大丈夫?」


「いや、これはいる。これも必要だ」


 殺し合いなどなんでもありなのだから、(つば)競り合いをしながら脛を蹴り上げてくる剣技など当たり前である。

 故に戦闘用のロングブーツの脛の部分には金属が入っていることも多く、想像以上に重い物がほとんどなのであった。


「これで膝から下は良いとして、膝から腿はどうしよう? 弾いた刃物が腿や膝に当たる事ってあるよね?」


「まぁ、あるな」


「ここに関してはアイデアが無いんだけど、動物の皮に油でも塗ったようなガードとかはないの?」


「おまえ凄いな、まさしくそんな物がある」


 ベルカンプはカウボーイが馬に乗ってる時に装着する皮製のエプロンみたいなのを想像して言ってみたのだが、マチュラにもどうやらそんな衣装はあるらしい。


 じゃぁそれをして貰ってと一息入れると、盾を預けた12名が入ってくる。


 同時にソシエが、

「ベル、出来たわよ。味見してみて」


 ベルカンプに言われた分量で砂糖、塩を混ぜた水を持ってきた。


 ベルカンプは一口含むと、

「温いからあんま美味しくないけど、大体こんな味だと思う」


 感想を述べたベルカンプは、続いてそこにいる全員にも試飲させてみた。


「ん~……。塩味があまりしなくてほんのり甘いが……冷たいともっと美味いのかな?」


 盾の兵士達も女性達もそんな感想だが、カミュだけは「美味い!」と、すぐ2杯目を頂こうとする。


「この水をどうするの?」


 ソシエが聞くと、

「漫画でよ……異世界の本で作り方を読んだんだけどね、この水は経口補水液(スポーツドリンク)っていうんだ。この水で給水するとニンゲンの体への吸収が速いらしくて、仕事で体を酷使する人や病気で体の水分が足りない人に飲ませると効果的らしいよ」


 それを聞いたカーンと12名はもう一口味見し、「慣れると美味いかも」と感想をやや変化させる。


「あのさベル、ニンゲンには効果があるらしいけどさ、コルタにも効果はあるの?」


「あ、しまった……」


 ソシエの指摘まで気が付かなかったベルカンプは想定以上に自分に余裕がない事を悟る。


「カミュ、日没後にこの水で給水しながら体を動かしてもらえる? その感想で明日使うか決める事にしよう」


「この水がもっと飲めるんだろ? お安い御用だ」


 カミュの方はカミュの方で願ったり叶ったりの様子で助かった。


 ベルカンプは日の傾き具合を眺めると、

「日が落ちる前に覚えなきゃならない事がある。全員、外に出て隣の砂地に集合してください」


 そう言いつつ文房具からマジックとノート、首にはストップウォッチをぶら下げて率先して部屋から出て行くのであった。

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