二十一話 女って複雑
三家族は円を組んで腰掛け、アンナ達が焼いてくれたパイで昼食をとる。
「ベル、随分ヨーガと打ち解けたようじゃないか、道中何度もヨーガの笑い声が聞こえてきたぞ」
オットーは美味しそうにパイをほうばるベルに声をかける。
「うん。弱点を見つけちゃったからね。ヨーガはね、子供が話すシモネタがツボなんだよ」
ほぅ、と意外そうな顔をするオットーにバツが悪そうなヨーガ。
「ベルってそんなゲッスい会話するんだ? 意外だったわね~」
ニヤつくソシエに、
「そんなゲスい話しじゃないよ? 旦那さんのいる前でハナを口説いただけさ」
フフン、と優雅に返して見せた。
ベルカンプは一瞬溜めると、
「ハナ……」
と先ほどの口調でハナを呼びかけ、その口調に耐性が崩壊しているヨーガが「ぶふぅ」とパイを戻しそうになる。
「そこの水取って」
フェイントをかけるベルカンプなのだが、ハナも子供に弄られるのが楽しくて仕方が無いので悪乗りを辞めるつもりはない。
二人のやり取りを見ていたソシエが
「なんだか楽しそうねぇ。ベルは私の事一回も口説いてくれた事ないのにねぇ」
皮肉をたっぷり混ぜて言うのだが、
「だって、母親は口説けないでしょ?」
と正論を言うベルカンプ。
「誰が母親だって? 私は姉でしょうが!」
「いや、姉でもダメでしょ」
ソシエの反論にさらにベルカンプは正論で返すと、すっかり機嫌を損ねたソシエは
「なら近所のお姉さんでいいじゃない! どうよこれで?」
と言うのだが、
「僕達、家族じゃなかったの……?」
ひどく当たり前の事を言うベルカンプに、
「…………そうよ家族よ!」
と、とうとう完全にヘソを曲げて馬に水をあげに行ってしまった。
男衆4人は無言で顔を見合わせると、女って複雑だよねと、全員が神妙になるのであった。




