ネクロ様は今日もアンデットの森に引きこもる
とある世界の大陸の1つのとある国に『アンデットの森』と呼ばれる聖霊魔法と悪霊魔法の両方を弱点を持つモンスターが生息する森が有りました。
聖霊魔法と悪霊魔法の両方を使える者が国に一握りしかいない国において、危険度のとても高い森でありました。
この森のモンスターはひどいときには毎晩のように近くの村や街を襲い、人々を喰い隷族にしておりました。
そのような危険な街や村から離れたいという人の心はありますが、森の近くは土地が良く肥え、他の地域と比べると作物が早く美味しく育つのでそういうわけにもいきません。
また、森で採れる木材は魔法の使い手にとって非常に相性がよく、チカラの電導率も良いため杖の材料として非常に重宝されていました。
しかし、それにはモンスターという大きな障害がありました。
そこで国から一人の聖霊魔法と悪霊魔法の使い手である少女が派遣されました。
彼女はクルミ=タクト。後に『ネクロ様』と呼ばれるようになる、国唯一の死霊使いである、まだ僅か15才の少女でした。
派遣された少女・・・・・・いえ、ネクロ様は森の中にある、先代(と言っても100年以上前に死んだ人間)が住んでいた小さな屋敷に移り住みました。その屋敷の周りはモンスターが昼間でもハッキリと現れるほどモンスターの気配が濃い場所であり、ここはモンスターの生まれる場所でも有りました。
そもそも、何故モンスターがあらわれるのでしょうか?
それは、この森の出現のきっかけから述べねばならないでしょう。
この森がある場所は今から1000年前に、大きな大戦があり、そこで魔とよばれるチカラを持たせた生物をが解き放たれ、ソレが沢山の人の命を奪った。その時に魔のチカラを持ちし生物・・・・・モンスターがあまりに人を喰らった為に人の思念が乗移り、モンスターを放った陣営者を襲い出した。その陣営だけが消えるならば良いが、それ以外の者をも襲うようになってしまい、大陸の人が滅びるという危機感を持った人間の一人が偶々聖霊魔法と悪霊魔法の使い手で、当時聖樹と呼ばれていた木をモンスターの集団を囲うように植えていきました。
そして、魔物の集まる中心から見て東西南北の方向に悪霊、ゾンビ化したモンスターを聖樹の円からでないように縛る為の祠を作り、その守り手によって村や街がつくられていった。
月日を立つごとに聖樹は中心へ向かって増えていき、モンスターは聖のチカラで縛られ円から出られなくなっていった。
それも長くは続かなく、祠の守り手が亡くなり祠の意味を理解しない人間が現れると、祠は壊されるか移動されモンスターを十分に縛ることができなくなった。
その緩んだ縛りから抜け出したモンスターはそうして人々を再び襲うようになっていったのです。
そこで事態を重く見た国は、できる限り森の管理者になりうる人材を送ることに決めました。
しかし、ここの森は特殊すぎて送ることが出来るのは精々100年ごと、下手をすればそれ以上空くのは仕方がないことでした。
ネクロ様の先代、森の統率者様もそのお一人で、オカリナで奏でるメロディに聖霊魔法と悪霊魔法を乗せ、森からモンスターが出る頻度をコントロールされました。
完全に森から出さないことも出来なくも有りませんでしたが、それをすると周辺の畑に森の栄養が行き渡らず生育不良になったりとまあ、モンスターは害だけでなく益も与えると言うことだそうです。
森に移り住まれたネクロ様は、近隣の村人から見ると夜な夜な怪しげな儀式をしてアンデットを呼んでいるように見えましたが、増えすぎたアンデットを支配下に置き森から出せるアンデットの強さを制限していたのでした。
それからアンデットの森にネクロ様が移り住み数年が立ち、森の周辺の村々の被害が減っていったため、国はアンデットの森から被害の酷い他の地域にネクロ様を派遣しようと画作しました。
そのため国は見た目の美しい国一番の美男子である第二王子を使者とし、アンデットの森に派遣したそうです。
しかし、その目論見は成功しませんでした。
ネクロ様はたいそうアンデットの森という最高の研究対象をきにいっておりましたし、村の人々と打ち解けることができるようになったところだったのです。
その努力を台無しにされそうになった。その事実だけでネクロ様は十分でした。
それからネクロ様は森から出てこなくなり、移り住んでから取った弟子とお世話になっている村人数人以外の一切の人を森に入れなくなってしまいました。
困ったのは国や森の木々を切って生計を立てていたきこりだけではありません。この木々で作った製品は世界中の魔法使いと呼ばれる人々の愛用品であったのです。
そのためアンデットの森は連日多くの人がつめかけ、あの手この手でネクロ様の機嫌をとろうとします。
そして今日も森の近くでは、
「ネクロ様、今日こそアンデットの森から出てきてくださるか、入れてくださるかしてください!」
「いやです!」
というやり取りが聞こえてくるそうです。