鈍いよ!!小月
ガヤガヤ…
「おーい、木材持ってきたぞ」
「サンキュー、じゃあやるか」
「ねーこれって発注数合ってるの?」
文化祭も1週間前を切り、学校中がかなり騒がしくなってきた
皆がそれぞれ熱心に作業をする
…かくいう俺もその1人であるのだが
「机の配置はこんなもんだろ?」
「いいぞ、あとはカウンターなんだけど…」
「雪未~そこのセロハン取って~」
「あ、うん」
俺と小月は机の配置とメニュー看板の制作
雪未と黒磯、尾久は店の飾り付けをしていた
「小岩、倉庫にベニヤ板取りに行くぞ」
「おう」
テクテク…
「いやー、かなり盛り上がってきたな」
「だろうな。これ以外盛り上がれるイベントって少ないしな」
「でもいろいろ楽しみだな」
初めての高校の文化祭はどんな感じになるのか、それは俺も楽しみだ
ガンッ!!
「きゃん!?」
あれ?今、足下で誰かの声が…
「って、高井戸さん!?」
「う~痛い…」
なぜか屈んでいた高井戸さんとぶつかった
「ごめん!!大丈夫?」
「平気だよ。」
「それにしても、由香里。こんな所で何してんの?」
小月が聞いてきた
「あ…あのね…ちょっと事情があって…」
「事情?」
「え…えと、だ、男子の服を着なきゃいけなくて………逃げてきちゃいました…///」
あぁ、そういうことか
「男装?パフォーマンスかなんかか?」
「そういや小月は聞いてなかったか。高井戸さんのクラスは男装女装喫茶をやるんだって」
「ふーん。でも俺は由香里の男装見たいけどな」
カアァ…///
「ほ、本当に?///」
「まぁな。結構似合うかもしれないぞ」
「ま、正孝が言うなら…戻る…///」
そう言って高井戸さんは戻っていった
「お前…結構恥ずかしいこと言うのな」
「そうか?だって面白いそうじゃん」
「……………」
もしかして小月って鈍い?
~~~~~~~~~~~
昼休み
「結構進んだな。」
店の内装はかなり進んでいて、もはや完成に近かった
「それにしても、授業休んでまで準備なんて楽だよね~」
「学校自体がデカいから、準備にそれなりに掛かるかららしいね」
「そうだよね~この学校、新入生が迷うほど広いし」
「あれ?そういえば小月は?」
尾久が聞いてきた
「アイツなら、宣伝ビラを校内に貼りに行ったぞ」
「気合いが入ってるね~」
「ところで尾久は最近、なんかネタ見つかったの?」
「うーん…最近はないかな。小岩と雪未ちゃんのネタをでっち上げしてもいいんだけど」
「止めんか!!」
「冗談だよ~小岩と雪未ちゃんの邪魔はしないって…だって、2人って…」
ギュウ…
「2人ともラブラブすぎて、皆呆れてるしね(汗)」
俺と雪未はご飯食べながら、腕を組み合っていた
「小岩は恥ずかしいとか思わないの?」
「んー…あんまり恥ずかしいとは思わない」
「見てるこっちは恥ずかしいんだけど///」
「なんだろうな、恥ずかしいって感じがしない」
「自覚ないのかよ…」
ちょうど帰ってきた小月は呆れ顔で言ってきた
「お、全部貼ってきたの?」
「あぁ………とにかく皆の前ではイチャつくの止めてくれ」
「分かった分かった」
そう言って俺は雪未の腕を解いた
「しかし、本当に信じられないな。小岩がこんなに変わるなんて、前ならこんなの恥ずかしがるぜ」
確かに前の俺なら、完全にイヤがってたはずだが…
なぜか今は見られてもなんとも思わないし、いつも雪未にくっついていると安心する…
「恋愛をすると人は変わるって、本当なんだね」
「そうだな。コイツらがいい例だよね」
「小月も恋愛をすれば、変わるんじゃないか?」
俺は聞くが
「ないない、俺はそんなのにはならないって…俺は二次元が恋人だしな…」
……………小月ってやっぱり鈍いな
~~~~~~~~~~~
午後、また作業が始まった
ガヤガヤ…
「ベニヤ板って案外重いな…」
「でももう少しで終わるから頑張ろう」
俺と小月はベニヤ板を運んでいると
ガサゴソ…
「ん?今、なにかいたような…」
「そこの角に隠れなかったか?」
俺達は覗いてみると
「あ、由香里」
「ふわぁ!?ま、正孝!?///」
そこには角でうずくまる高井戸さんを見つけた
「どうした?腹痛いのか?」
「あ…そうじゃなくて…あのその、あんまり見ないで…/////」
「保健室行くか?」
「そうじゃなくて………あうぅ/////」
なぜか高井戸さんが照れている理由は俺はなんとなく分かっていた
なぜなら高井戸さんは男装しているからだ
「大丈夫か?由香里」
「ほ、本当に大丈夫だから…えとその…///」
「顔が赤いけど…まさか!!熱出したのか?」
「ち、違うんだってぇ…///」
小月、そろそろ察せよ(汗)
「て…なんで由香里、男装してるんだ?」
気付くの遅ぇ…
「だ、だからぁ…恥ずかしいんだってぇ///」
「恥ずかしい?」
「こ、こんな格好で接客するなんて、嫌だよぉ(汗)」
「文化祭のテンションなら関係ないと思うんだけどな」
小月の言うことも一理あるんだが、高井戸さんの場合は本気で恥ずかしがってるからな
「と、とにかく…私、教室に戻るから!!///」
ダッ!!
あ、逃げた
高井戸さんはそのまま廊下を走り続ける
しかし…
ドンッ!!
「きゃあ!?」
「痛っ!!」
角で誰かとぶつかった
「ご、ごめんなさい…」
「おい!!気をつけろや!!」
「ほ、本当にごめんなさい…」
「ごめんなさいじゃねぇ!!ぶつかってきたせいで制服に飲み物こぼれちまったじゃねえか!!」
「あ…す、すいませんっ!!」
なんともガラの悪そうな3年にぶつかったらしく、かなり怒鳴り散らされていた。
これはマズいな…
「どう服を弁償してくれんだ、てめぇ!!」
「あの…その…」
「おぅ、お前なに男子の服を着てんだ?」
「えと…これは………」
「よし、弁償の代わりにその服をよこせ」
「え!?服をよこせって…」
「いいから脱げ!!」
するとその3年は高井戸さんの服を剥ぎ取り出した
もう限界だ。早く止めないと…
すっ
「え?」
「いやぁ!!止めてください!!」
「うるせぇ!!」
ひゅ…
ガンッ!!
「ぐぁ!?」
「!!!??」
いきなり3年は悲鳴をあげて吹き飛ばされた
「おい、何してんだ、オラ」
「痛ぇじゃねぇか!!邪魔すんじゃねぇ」
「何してるかって聞いてんだよ!!このクソ野郎!!」
そこに立っていたのはなんと小月だった
「コイツが俺の服を汚しやがったんだ」
「そうだな。それは由香里が悪いな」
「そうだろう!だからコイツの服を取ろうと…」
「で、なんで剥ぎ取ろうしてるの?バカなの?」
「!?」
おぉう…小月のヤツ3年に喧嘩売り始めた
「よく人の前でそんなこと出来るな。」
「っ……………」
「3年だからって調子乗ってんじゃねぇぞ」
「~~~~~!!!」
ブンッ!
「ぶっ殺すぞ、この野郎!!」
「……………」
ひゅ…
「足腰がなってねぇなぁ」
ガンッ!!
「ぐぁ!?」
小月のパンチが腹をえぐるようにして当たり、3年は腹を押さえて倒れ込んだ
「ぐ………」
「今度、由香里に手を出したら、タダじゃ済まさねぇぞ!!」
「く…お、覚えとけ!!」
お決まりの台詞を吐いた3年は逃げていった
「だ、大丈夫か?由香里?」
「あ…その…大丈夫…」
「……………」
こんな小月…初めて見た。小月ってこんなスキルあったっけ?
「小月…」
「どうした?小岩」
「お前…凄かったな…」
「え?あぁ…つい手が出てな」
「そういう印象がないから、びっくりした…」
「小さい頃から武道習ってたからな」
マジか…俺はてっきりただのエロゲ魔だと思ってたけど
「ところで高井戸さんは平気?」
「おっと…ケガしてないか?」
「ぽーーー…/////」
「え?」
高井戸さんを見ると、顔を赤くしてぼーとしていた
あぁ…これは完全に…
「どうした!?熱でも出したか?」
「……………」
鈍いよ…小月