降臨七発目 アイドルデビューしました
マイナー作家にして邪神のツクヨだ。さて、今回はなにを斬るかな?。
すっかり賑やかになってしまった、俺の家の周り。
先日、やって来た邪教集団「メツボー教」の奴らが勝手に盛り上がり、辺り一帯を開拓。立派な街にしてしまった。本当に無駄に優秀な奴らだ。明らかに進む方向間違っているだろ!。とはいえ、便利な奴らではある。
「邪神様、貢ぎ物をお納め下さい!」
色々、貢ぎ物をくれるしな。ちなみにコイツら、世界中にネットワークを張り巡らせているらしく、遠い異国の品も貢いでくれる。大したもんだ。
「はい、ツクヨ様! もっとセクシーさを強調したポーズをお願いします! おっ良いですね! そのポーズ頂きです!」
カシャカシャ! カシャ!
「良いですね、良いですね! ツクヨ様、貴女は今、輝いています! セクシーです!」
何やら大興奮して写真を撮りまくる、メツボー教のカメラマン。新たな布教活動用のパンフレットに使うんだと。
その他にも、メツボー教の原型師がツクヨ様フィギュアの制作をしている。信者獲得の為の集会のチケットに付ける限定品とか。
何故こうなったかと言うと、俺の意見だ。
最初、「メツボー教」の奴ら、世界征服の第一歩として、近くの街を攻めるだの、水源に毒を流すだのと物騒な事を言い出したので、俺が即座に却下した。コイツらマジでバカだ!。
何故止めるのか訊かれたので、教えてやった。
「あのな、お前ら。そういう物騒な事をするから毎回、正義の味方とか勇者にやられるんだろうが! 」
「言われてみれば、確かに」
「だったら、改めろ! 学習しろよお前ら!」
と、言うわけで今に至る。とにかく、コイツらに物騒な真似をされたら迷惑だからな、俺が。
さて、俺の家だが、今やメツボー教信者が毎日の様に拝みに来る。教祖の奴が、勝手に邪悪大神殿と名付けてくれたせいでな!。
ちなみに賽銭箱が設置されていて、この収入がバカにならない。設置したのはコウだ。
「皆さん、信仰の深さは金額に比例します。貴方方の信仰の深さを見せて下さい。信仰深き者には邪神様のご加護が有るでしょう」
こう言って、信者達を煽ってやがる。恐ろしい奴だ……。
「ほ~、今度はアイドルデビュー計画か」
「は、我らメツボー教の新たな信者獲得に向けての計画です。幸い、ツクヨ様を始め、美貌の方々が揃っておられますので、三人組でデビューして頂きます」
ある日、メツボー教の教祖が、こんな話を持ち込んで来た。
「なるほど、話は分かった。だが、出来るのか?」
「心配ご無用です。我らメツボー教信者には、芸能プロデューサー、服飾デザイナー、メーキャップアーティスト、歌やダンスの指導員等も揃っております」
「お前ら、本当に人材豊富だな……」
「勿体無いお言葉にございます」
いや、別に褒めてねーから。むしろ呆れてるから……。
「と、言うわけでだ、俺達はアイドルデビューする事になったぞ」
その日の夕食で、コウとイサムにアイドルデビューの件を話す俺。
「あの~、ツクヨさん。邪神がアイドルデビューして良いんですか?」
「イサム、アイドルとは本来、あこがれや崇拝の対象です。邪神とて崇拝の対象。ならば問題有りません」
「だったら、俺、応援しますね。アイドル業頑張って下さい」
「何言ってるんだイサム。お前もデビューするんだぞ」
「は?」
教祖の奴は三人組でデビューして頂きますと言っていたからな~。つまり、俺、コウ、イサムの三人だ。
「嫌ですよ! アイドルデビューなんて! 俺、男ですよ!」
予想通り拒否するイサム。だが、拒否権は無い!。
「なぁ、イサム。お前、誰の家に住んでるのかな~? 誰のおかげで飯を食えるのかな~? メツボー教の奴らにお前が勇者と教えようかな~?」
「流石はマスター、見事な邪神ぶり」
「でも、俺、男ですよ!」
「それなら問題無い。お前、下手な女より可愛いからな。メツボー教信者にはメーキャップアーティストや着付けのプロもいるし十分、通用するさ」
そう、イサムは美少年なのだ。いわゆる男の娘って奴だ。本人はかなり気にしているが、不細工よりはよほど良いと思うがな。
「という訳で、頼むよ、メツボー教信者の皆さん」
「「「お任せ下さい!」」」
俺が呼ぶと、メツボー教信者のメーキャップアーティストや着付け師等が入ってきた。
「わ~っ! ツクヨさんの鬼! 悪魔! 人でなし!」
「違うぞイサム。俺は邪神!」
「最近、マスターは邪神ぶりが板に付いてきましたね」
「ほっとけ!」
「うおぉおおおっ!」
「まさか、これ程とは……」
俺もコウもびっくりだ!。何がと言うと、女装したイサムだ。正に完璧な美少女がそこにいた。間違い無い、これはウケる!。メツボー教信者のメーキャップアーティストや着付け師、グッジョブ!。
「う~、男として一生の恥だ……」
「何言ってるんだイサム、お前最高だぞ!」
「私から見ても見事な美少女です」
「嬉しくないんですけど……」
「よし、お前の名前はイサミに決定! さぁ、デビューに向けて頑張るぞ!」
「しっかり稼ぎましょう!」
「あんた達、最低だーーーっ!!」
ちなみに、その後開催された初デビューのコンサートは大成功!。イサミのグッズが特に売れたそうだ。恐るべし、男の娘。
では、次なる降臨を待て。
降臨七発目をお届け。さて、いつまで続くやら。