降臨四発目 「勇者」を斬る!
現在、俺は自宅の自室でせっせとWeb小説を執筆中。特にやる事が無いからな。
邪神として転生され、異世界に飛ばされた俺。食料に関しては何とかなったので、次は住居だ。
俺が最初にいた、神殿廃墟の地下室は却下。あんな所に住めるか!。それに周りの土地も滅茶苦茶に荒れ果てているしな。
そこで、俺は創造主ムメイに頼み、辺り一帯を綺麗にしてもらい、更に一軒家を建てて貰った。俺をネタにWeb小説を書いているんだ、それぐらいしてもらう。で、今に至る。
「いや~、平和だな~。勇者とかが攻めて来るかと思ったが、誰も来ないな」
「現在、この世界は人間と魔族による戦争の真っ最中です。それどころではないのでしょう。その上、此処に来るには、あの密林を抜けねばなりませんし」
見た目、十三~十四歳程の少女、その正体は魔書の化身、コウが答える。
「ま、俺としては別に誰が殺し合おうと関係無い。俺が無事ならそれで良い。何せ、俺は邪神だからな」
「流石はマスター、見事な外道発言です」
「外道言うな、事実を言っただけだ。さて、暇だし、また何か斬るか」
「前回は、ナローの上位ランカーや出版化を斬りましたね。今回はなにを斬りますか?」
「そうだな……。」
俺が何を斬ろうか考えていたその時。
「出てこい、邪神! この勇者イサムが成敗してやる!」
何か、外で騒いでいるバカがいる。勇者とか名乗っているが……。
「おい、コウ。何か勇者とか言ってるぞ」
「おやおや、聖王国側が勇者を召喚してきましたか。仕方ありません、マスター、お相手してあげて下さい」
「めんどくさいな~」
「お前が邪神か! 俺は勇者イサム、世界の愛と正義と平和の為、お前を倒す!」
見た目、十四歳ぐらいか。一人の少年がいた。勇者を名乗るだけあって、かなりの力を感じる。しかしこいつ厨二病全開だな、自分のセリフが恥ずかしくないか?。
「あぁ、そうだ。俺が邪神ツクヨだ。だが、せっかく来てもらって何だか、さっさと帰れ。お前の相手などめんどくさい」
「ふざけるなーーっ!!」
キレていきなり斬りかかってきた。最近のガキはキレやすいな。ま、俺には効かんがな。
ガキィィィィンッ!
俺に向かって降り下ろされた剣は俺に当たる直前で折れた。やっぱりな……。
「何故だ!? 何故、聖剣が折れる!?」
やはり驚いているな。これぞ邪神スキルの一つ、ジャシンガード。LV1200000未満の攻撃は一部例外を除き遮断する。
「残念だったな、悪いが、お前じゃ俺には勝てん。訊くがお前LVいくつだ?」
「LV300だ」
「俺、LV1200000だ」
「恐れ入りましたーーっ!!」
うん、実に見事な土下座をされたぞ。
「まぁ、茶でも飲めよ」
「頂きます……」
俺は自称、勇者のガキ、イサムを自宅に上げて、茶を出してやった。降参したガキをぶち殺すほど、俺は外道じゃない。
「あの~、俺はこれからどうしたらいいんでしょうか? 邪神を討伐出来なければ、戻れませんし」
「はっきり言ってやる。仮に邪神を討伐しても、お前に未来は無いぞ。聖王国の連中はお前を殺すぞ」
「そんなバカな! どうして殺されるんだ?」
こいつ、やっぱりバカだな。ガキと言うべきかな?。
「あのな、勇者ってのは魔王や邪神がいるうちは世界の希望だ何だと持て囃されるが、討伐後はただの厄介者に過ぎん。何せ、魔王や邪神を倒す程の力を持つんだ。世界にとって新たな脅威となる。そんな奴を周りが放っておくと思うか?。俺なら用済みになり次第始末する」
そこへコウも話に加わる。
「マスターの仰る通りです。歴代勇者は皆、用済みになり次第始末されています。所詮、勇者など平和の為の生け贄。いや、使い捨ての駒に過ぎません」
ショックを受けまくる、勇者イサム。気の毒だが、これが勇者の真実だ。現実はゲームや小説の様に甘くない。
結局、勇者イサムは俺の家に居候する事になった。頑張って働けよ。
では、次なる降臨を待て。
降臨四発目をお届け。作中でも書きましたが、魔王や邪神を倒した後の勇者なんて、世界にとって、正確には権力者にとって厄介者でしかないと思います。