降臨三発目 マイナー作家の悲哀
モグモグモグ、ポイッ。モグモグモグ……。
現在、絶賛食事中の俺。食べているのは、紫に水色のマダラ模様のバナナ似の実キョジンゴロシ(猛毒)。
ステータス異常無効の俺だから食える。一般人のみんなは真似すんな!。そんな俺は今、攻略本の化身コウから邪神について詳しい話を聞いていた。食べながらで行儀悪いとか言うな!。
「マスター、まず覚えて欲しい事は、貴女は大して強くないという事です」
「ちょっと待て! 俺はLV1200000の邪神に転生した筈だが?」
「確かにその通りです。が、貴女はその身体を使いこなせていません。言うなれば、最新鋭の戦闘機にド素人が乗っているようなものです」
「分かりやすい説明ありがとう」
世の中そんなに甘くないってか。良く有る、俺TUEEE!はさせてくれない訳だ。
「まぁ、それでも普通の人間より優秀ですが」
「どんな風にだ?」
「論より証拠、試しにこの瓦礫を殴って下さい」
コウはそう言うとわりと大きめの瓦礫を指差した。
「素手で殴るのか? 痛くねーか?」
「いいから、早く殴って下さい、グズですね」
「分かったよ、クソッ! せーのっ!」
バガン!
瓦礫はパンチ一発で割れた!。だが、俺の拳は特に痛くない、ビックリだ!。
「驚くのは、まだ早いですよ。次は『ジャシンパンチ』と言って殴って下さい」
「なんだソレ? 凄くバカっぽいぞ」
「グダグダ言わずにさっさとして下さい!」
「へいへい……」
「返事は一回!」
「はい!」
うるさい奴だな。とりあえず、別の瓦礫を殴る。
「ジャシンパンチ!」
投げやりな口調で瓦礫を殴った、すると。
「バガーーン!」
木っ端微塵になった!。なんだこの威力、さっきと全く違う。これも邪神の力か?。
「どうなってんだ、コレ。さっきと威力が段違いだぞ。これも邪神の力か?」
「そうです。邪神スキルの一つ、ジャシンパンチです。その他に、ジャシンキック、ジャシンカッター、ジャシンビーム、ジャシンイヤー、ジャシンウィング等が有ります」
「どこかで聞いた様な名前ばっかだな」
「気のせいです、気にしたら負けです」
「何に負けるんだよ……」
と、まぁ俺とコウで話をしていたら、客が来た。創造主のムメイだ。何しに来たんだこいつ?。仕事しろよ!。
「チクショー! 新作が全くウケない! お気に入り登録3件てなんだよ! 舐めてんのかコノヤロー! 俺は創造主だぞ!」
新作小説が全くウケなかったらしく大荒れ。俺も読ませて貰ったが確かにつまらん、こりゃダメだ。
「悪いがムメイ、あんたの小説つまらんぞ。ランキング上位の作品とくらべたら、ゴミだな」
「マスター、ゴミと一緒にしたら失礼です、ゴミに対して」
「お前ら、天罰食らわすぞ!」
んな事で天罰食らわすな。安過ぎるぞ、天罰。もっと他に天罰食らわすべき奴らがいるだろうが。だから世の中良くならないんだ。
「ムメイ、あんた『ナロー』に投稿してたんだな、俺も投稿してたんだ。ま、全くの無名だったけどな」
『ナロー』とは俺の元いた世界で日本一の小説投稿サイトだ。ランキング上位の作品は出版されたりしている。俺も投稿していたが、あくまでも道楽、俺に文才が無いのは分かっていたしな。
「ツクヨ、お前も投稿してたんだな。ちなみにお気に入り登録はどれぐらいだ?」
ヤバい、こいつ絶対怒る。とはいえ、こいつがその気になれば絶対バレる。創造主だしな。仕方無い、正直に言おう。
「三作書いて、お気に入り登録数は最高114件だ」
「お前、天罰だーーーっ!!」
「落ち着いて下さい、ムメイ様。114件など、ランキング上位の方々と比べたらゴミ以下です」
ナイスフォローだコウ!。しかし、ゴミ以下で悪かったな!。文才が無いのは分かっているが、他人に言われるとやはりムカつく。
「なぁ、ムメイ落ち着けよ、あんた創造主だろ、神より偉いんだろ」
「そうだった、俺は創造主、誰よりも偉いのだ!」
「流石はムメイ様、立ち直りが早い、単純でいらっしゃる」
頼むからコウ、いらん事を言うな。
「ムメイ、あんたの気持ちは分かる。お気に入り登録数、ユニーク、プレビューが増えない、感想もレビューも来ない、実に虚しいよな。俺もそうだったし、と言うか、ほとんどの人がそうだぞ。ランキング上位なんて、ほんの一握りだ。あの連中を基準に考えていたらやってられんぞ! あの連中は別の種類の生物と考えた方が良いぞ!」
「お前、ランキング上位の連中を無茶苦茶言うな……」
「仮にランキングトップになった所で、賞金が貰えるでもなし。更に出版された所で売れる保証も無い。売れなければ出版社に見限られる。俺、出版されたWeb小説を本屋で見たが、さっぱり売れてなかったぞ。誰一人手に取りもしない。無論、俺もな。大体、出版社からしてショボいしな。聞いた事が無い。つまり世間全体から見れば、Web小説なんて取るにも足らん、ちっぽけな存在なんだ」
「流石はマスター、妬み、僻みを炸裂させましたね。無名ゆえ出来る芸当ですね。ランキング上位の方々がやったら大惨事になりますね」
うるさいぞ、コウ。いらん事を言うな!。
「なぁ、ムメイ。Web小説なんて、所詮その程度の物なんだ。もっと気楽に行こうぜ。ランキング上位が、出版化がなんぼのもんだよ、そんなに偉いのかよ。所詮、世間は相手にしていないぞ」
「流石はマスター、無名作家を良いことに好き放題、言っていますね」
頼むから黙れ、コウ。
「今日は愚痴ってすまなかったな。実はランキング上位の連中全員、天罰で抹殺してやろうと思っていたんだ。後、ナローの運営会社にも」
危なかった!、後少しで、大量殺戮が起きる所だった!。
「これは詫びの気持ちだ、受け取れ」
ムメイはそう言うとスマホとノートパソコンを置いて帰っていった。意外と気前の良い奴だな。あ、ちゃんとネットに繋がる。ナローに新しく登録しよう。
では、次なる降臨を待て。
降臨三発目をお届け。どうせ、ろくに読まれないので、好き放題に書きました。