Incident ー08 『帰還』
一応、このお話はこれで「一巻の終わり」です。
でも「完結」にしないのは、作者の「未練」です(鹿馬
こんなお話しを読んでくださった皆様。 心の底から感謝します。
ありがとうございました。
最後のお話しは、ちょっと雰囲気が違います…(汗 お許しを。
つか、コレって規約に抵触…?(大汗
そうなれば即刻「後ろに前進!」します(大鹿馬
それではしばらくの間のお付き合い。並びにこれからも御贔屓の程、よろしくおねがいします(礼
「撃ち落としてください」
CVR Incident ー08
『帰還』
April・4・1993 日本/羽田空港 アリア航空88便(貨物機)
【この日。アラスカの国際空港に向けて飛び立とうとしていた、アリア航空88便は、直前に離陸した機から、上昇途中の2500フィート付近で激しい乱気流に遭遇したという報告を受けていた】
ETA
-29:58
副操縦士「まずは、チェック・リストから始めましょう」
機長「ええ。まずはそれが最優先ね。うふふ」
副操縦士「はひ。さあ、お手をどうぞ」(笑い声)
-29:22
副操縦士「はひ? なにをしているの?」
航空機関士「だってここからの眺めが、一番なんですもの」
【ARIA航空88便は貨物機であるためか、当時では珍しく、コクピット・クルーは三人とも女性だった】
-29:05 航空機関士「うわあ、素適っ」
-28:54
機長「良く見える?」
航空機関士「はい。 とっても。 ありがとうございました」
【どうやら航空機関士は、コクピットからの眺めを堪能していたようだ】
-28:38
副操縦士「はひ。 良かった」
航空機関士「本当に、ここはスゴいです。 話しには聞いてましたけど、ここがこんなに素適な場所だったなんて」
機長「あらあら」
航空機関士「私がこの場所に戻ってくるのには、まだまだ時間がかかるけど、この眺めは忘れません。絶対にもう一度、この場所に帰ってきます」
副操縦士「うん。 それはとってもステキングだね。 私、ずっと待ってるよ」
航空機関士「はい。 ありがとうございます」
機長「うふふ。 恥ずかしいセリフ、禁止。 ね?」
副操縦士「ええ~ぇ」(笑い声)
-28:00
機長「さあ、チェック・リスト再開よ」
航空機関士「はい。 えっと……安定板のトリムが終わって……次はINSです」
副操縦士 「INSセット」
*INS (inertial navigation system)は、加速度(慣性)を利用した慣性航法装置。
自動操縦装置に結びつけ,飛行前にあらかじめ目的地までのフライト・プランをコンピューターに入れておけば,地上の航法援助なくして自動的に所定の飛行コースにのって,目的地に向け飛行できる。
-27:47
航空機関士「ピトー管のヒーターは?」
副操縦士「オン」
管制塔「アリア航空88ヘビー。 チエックが終了後、デパーチャーと交信して下さい」
*デパーチャー 主に出発機を取り扱う、ターミナル管制所内の管制員のこと。
-27:22
航空機関士「燃料ヒート。 チェック・アンド・オフ。 アンチ・アイス?」
副操縦士「チェック・アンド・オフ」
航空機関士「シートベルト?」
機長「オン」
副操縦士「オンです」
航空機関士「さあ、OKです。 テイク・オフ・ブリーブ?」
副操縦士「了解!」(笑い声)
-27:00
機長「いつもと同じ。 うふふ。 離陸したら10マイル地点。 高度2000フィートで、ヘディング・160から・015へ旋回。いい?」
航空機関士「はい。 飛行計器は?」
機長「チェック」
副操縦士「チェック」
航空機関士「タキシング・チェック完了。 ……ああ。本当に素適な眺め。 私は絶対ここに戻ってくる」
副操縦士「うん。 絶対だよ」
航空機関士「はい。 絶対に!」
機長「あらあら。 うふふ」
-26:38
航空機関士「OK。フラップ、V速度。 トリム?」
機長「滑走路34L、再チェック」
副操縦士「滑走路34L、再チェック」
航空機関士「チェック。滑走路34Lより離陸。 34L。 アンチ・アイス、オフ。 INSは?」
副操縦士「チェック」
航空機関士「APU停止。 燃料系統、セット」
*APU (Auxiliary Power Unit )補助動力装置。
航空機の各部に圧縮空気や油圧、電力を供給するため、メインエンジンとは別に搭載された小型のエンジンの事。
-26:14
副操縦士「管制塔。 こちらは、アリア航空88ヘビー。 離陸準備が整いました」
管制塔「アリア航空88ヘビー。 こちらは羽田管制塔。 滑走路34L離陸開始位置で待機して下さい」
副操縦士「了解。 羽田管制塔。 滑走路34L離陸開始位置でスダンバイ」
管制塔「他機の報告によると、激しい乱気流が高度2500フィート付近で発生中」
機長「はあ~い」
副操縦士「了解、管制塔。 ありがとうございます」
航空機関士「みなさん、覚悟はいいですか? すごく荒れますよぉ」(笑い声)
-25:56
管制塔「アリア航空88ヘビー。 滑走路34Lより、離陸を許可します」
機長「みんな。上空に激しい乱気流が存在するわ。 予想がつかない状況です。 しっかり気を引き締めて行きましょう」
航空機関士 「はい。 機長」
副操縦士「チェック・リスト完了」
航空機関士「完了」
-25:29 機長 「離陸」
【こうしてアリア航空88貨物便は、定刻で離陸して行く】
-25:00
副操縦士「80ノット。 V1……ローテイト。 V2。 ポジティブ・レイト」
機長「ギア・アップ」
管制塔「アリア航空88ヘビー。 デパーチャーと交信して下さい」
副操縦士 「はひ。 ありがとうございます。 テイクケア(さようなら)」
-24:30
デパーチャー「アリア航空88ヘビー。 左旋回してヘディング160度で飛行して下さい」
副操縦士「こんにちは。こちらはアリア航空88ヘビー。 現在1000フィートを190度で飛行中です」
デパーチャー「アリア航空88ヘビー。 レーダーで識別しました。 3500フィート付近で激しい乱気流が発生しています」
副操縦士 「はひ。了解です。 ありがとうございます」
機長 「マックス上昇パワー」
航空機関士 「マックス上昇」
【アリア航空88貨物便はここで、激しい乱気流に突入する】
-23:58 -ガタガタと機体が揺れる音。 ときおり、ドスンと激しい音。
-23:54
航空機関士「みんな、頑張って」
副操縦士 「左旋回してヘディング160」
機長「フラップ、10度」
副操縦士「はひ。10度」
航空機関士「きゃああああっ」
-23:39 -ピシッという音と共に、警報音が鳴り出す。
【激しい乱気流のために、この時アリア航空88貨物便は50度という急なバンク角で旋回した。
また対気速度も245ノット(約450キロ/時)だったものが、170ノット(約300キロ/時)にまで減速した。
第二エンジンのスロットル・レバーが限界まで引き戻され、逆推力装置が作動した】
-23:08 -激しい振動音。 何かが壊れ落ちる音
-23:03
航空機関士「きゃあ。 オ、オートスロットル・オフ! 何か落ちました!」
副操縦士「第二エンジン」
機長「ええ。 第二エンジンね」
航空機関士「はい。 第二エンジンが脱落したようです」
-22:51 機長「メーデー(緊急事態)を宣告して」
-22:46
航空機関士「第二エンジン。 スタート・レバー、オフ」
デパーチャー「アリア航空88ヘビー。 機体から何かが落ちたぞ!」
機長「はあ~い」
副操縦士「デパーチャー。 第二エンジンが脱落しました。 えー、メーデーを宣言します」
デパーチャー「アリア航空88ヘビー。 羽田に戻りますか?」
機長「ええ」
副操縦士「スタンバイ。 引き返します。 メーデーを宣言します」
-22:05
デパーチャー「アリア航空88ヘビー。 左旋回してヘディング240度。 3000フィートを維持せよ。 ILSで最終進入コースへ誘導します」
副操縦士「感謝します」
航空機関士「がんばれ!」
副操縦士 「スタンバイ・ワン。 スタンバイ・ワン」
-21:57
航空機関士「確認します。 第二、ファイア・ハンドル」
副操縦士「第ニ、ファイア・ハンドル、セット」
航空機関士「燃料、放出しますか?」
機長「ええ。 お願い」
【燃料満載で離陸した機体はこのような場合、余分な燃料を放出して機体を軽くしなければ、支障なく着陸する事が難しい】
-21:42
航空機関士「燃料放出開始。 585までで良いですか?」
機長「お願い。 フラップ・5度までもどして」
副操縦士「5度……5度ですか?」
機長「はい。 5度」
副操縦士「はひ。 フラップ、5度になりました」
機長「ありがとう。 あらあら。 やっぱり重いわね」
副操縦士「やっぱり、エンジンが落ちたんだぁ……」
航空機関士 「第二エンジンですね」
- ガタガタと、機体が振動する音が続く。
-21:02
デパーチャー「アリア航空88ヘビー。 これからどうしますか?」
航空機関士 「燃料の放出終了まで、あと三十分かかります」
副操縦士「えと…これから……えー、しばらくこのヘディングを維持します。 操縦系統に支障があります。 んと…それから、えー、速度も」
機長「みんな大丈夫?」
航空機関士「ぜんぜん、大丈夫です」
副操縦士「はひ。 へっちゃらポン! です」(笑い声)
-20:44
デパーチャー「了解。 お好きな滑走路にどうぞ。 アリア航空88ヘビー。 どこでも好きな滑走路に着陸して下さい」
副操縦士「感謝します」
デパーチャー「アリア航空88ヘビー。 テレイン・クリアランスを維持できますか?」
副操縦士「今のところ大丈夫です。 ええと……3000(フィート)を維持しています」
デパーチャー「アリア航空88ヘビー。了解」
副操縦士「燃料を放出中です」
デパーチャー「アリア航空88ヘビー。了解」
-20:11
デパーチャー「アリア航空88ヘビー。 どうぞ」
副操縦士「こちらアリア航空88ヘビー」
デパーチャー「航空自衛隊の戦闘機が、3マイルの地点にいます。 彼等はそちらの機体を視認しています。 もし外部点検を望むなら、接近して調べると言っています」
機長「お願いするわ」
副操縦士 「はひ。 ぜひ、お願いします」
-19:53
副操縦士「どの滑走路にします?」
機長「そうね……34Lにしましょう」
副操縦士「はひ。 羽田デパーチャー。 滑走路34Lに着陸を希望します。 あ。 こちらはアリア航空88ヘビーです」
デパーチャー「了解。アリア航空88ヘビー。 滑走路34Lへの進入を許可します。 いつでもどうぞ」
副操縦士「了解。 アリア航空88ヘビー。 ありがとうございます」
航空機関士 「2時方向から、戦闘機が接近中…あれはF‐4EJファントムです」
-19:21
F4パイロット・A「アリア航空88便。聞こえるか?」
副操縦士「はひ。こちらはアリア航空88ヘビーです ……どなたですか?」
F4パイロット・A「こちらは航空自衛隊、百里基地所属、680号。 聞こえますか?」
副操縦士「あ。 はひ。 よろしくお願いします」
F4パイロット・A「現在、貴機の状況を点検中」
-19:07 機長「凄いわ、あのパイロットさん。 まるで泳ぐように飛んでいる」
-18:42
F4パイロット・A「アリア航空88便。 どうぞ」
副操縦士「アリア航空88ヘビーです。 どうぞ」
F4パイロット・A「左主翼の前縁スラットの約60パーセントが破損している」
副操縦士「はひ」
F4パイロット・A「あー。 第二エンジンが脱落している」
副操縦士「はひ。了解しています」
-18:26
F4パイロット・A「クリ(後席員の事らしい)。 後ろはどうだ」
F4パイロット・B「後縁のフラップもかなり損傷しているな」
機長 「はあ~い」
F4パイロット・A「燃料も漏れている」
航空機関士 「現在、緊急放出中です。 それは大丈夫です」
F4パイロット・A 「了解。 アリア航空88便」
副操縦士 「ファントム・パイロットさん。 ありがとうございます」
-18:00
【この時いきなり、第四エンジンが脱落した。
乱気流の衝撃で金属疲労の破断が広がり、エンジン停止を引き起こした上、この時点で脱落したものと推定される。
最悪な事に、エンジンを固定するピンが途中でひっかかり、完全に脱落せず、中途半端な形でぶら下がってしまっていた。
空気抵抗が増し、激しい振動が機体を震わせ始める】
‐17:58
航空機関士「わ!?」
副操縦士「はっひぃぃぃぃぃぃ!?」
機長「あら?」
- ドタバタと騒ぐ音。 ガタガタと機体が揺れる音。
‐17:46
副操縦士「はわわわわわっ」
航空機関士「あうあうあうぅぅぅ」
機長「燃料の放出を停めて」
航空機関士「は、はい!」
‐17:35
デパーチャー「アリア航空88便。 大丈夫か?」
F4パイロット・A「アリア航空88ヘビー。 第四エンジンがひっかかっている」
機長「う……っ。振動が…激しい振動が……」
F4パイロット・B「このままでは、空中分解するぞ」
機長 「くっ……ファントム・パイロットさん。聞こえますか?」
‐17:11
F4パイロット・A「聞こえているぞ。 大丈夫か?」
機長「お願いがあります。 エンジンを…エンジンを撃ってください」
F4パイロット・A「なんだって?」
機長「第四エンジンを撃ち落としてください。そうすれば機体は安定します」
デパーチャー「アリア航空88ヘビー。 何を言っているんだ!?」
‐16:53
F4パイロット・A「分かった」
デパーチャー「なんだって!?」
F4パイロット・A「アリア航空88便。これより前に出る。ガンのセイフティ(安全装置)解除」
機長「お願いします」
デパーチャー「よせっ、百里680。危険だ!」
F4パイロット「680より管制塔。 なら今は危険じゃないのか? このまま何もせずに彼女達を見殺しにするのか?」
デパーチャー「それは……しかし…責任は………」
‐16:32
F4パイロット・A「責任は俺が持つ」
デパーチャー「………………」
‐16:26
F4パイロット・A「クリ。ベイルアウト(緊急脱出)しろ」
F4パイロット・B「うん?」
F4パイロット・A「こっから先は俺だけでいい。お前は離脱しろ」
F4パイロット・B「カンさん。ファントムは複座だぜ」
F4パイロット・A「……え?」
F4パイロット・B「俺がいないと背中が寒いだろ? それにこっちのマーチンベイカー、今、急に壊れたモンね」
*マーチンベイカー=F‐4EJ等に装備されている射出型座席の製造会社の名前
‐16:12
F4パイロット・A「クリ…すまねぇ……よしっ。いくぞ!」
F4パイロット・B「はいなっ、カンさん!」
‐16:00
航空機関士「燃料の放出、止まりました」
機長「はあーい。フラップを30度に」
副操縦士「は、はひっ。 30度…30度にセット」
機長「ギア・ダウン」
副操縦士「ギア・ダウン」
ーギア(車輪)が降りる音がする。 セットされる音が響く。
‐15:39
機長「パワーを上げて」
副操縦士「はひっ」
航空機関士「 第一、第三エンジンは、ノーマルです」
機長「さんきゅー」
ー振動音、高まる
ガタガタと揺れる音。金属がこすれる音。何かが壊れていく音。
‐14:59
デパーチャー「……百里680号」
F4パイロット・A「なんだ。まだ言いたい事があるのか」
‐14:50
ディパーチャー「ああ……680。 アリアを………彼女達を助けてやってくれ」
F4パイロット・A「……了解。任せろ」
‐14:35
F4パイロット・B「カンさん。真正面から行くぞ。垂直尾翼が当たらないように、背面だ」
F4パイロット・A「逆さまになって、すれ違いざまに一撃か。難しいな」
F4パイロット・B「やめるかい?」
F4パイロット・A「難しいと言っただけだ。誰もやめるだなんて言ってない」
F4パイロット・B「進路と速度とタイミンングはこちらでやる。 射撃に専念しろ」
F4パイロット・A「了解、人間コンピューター。頼むぜ」
‐14:32
F4パイロット・B「アリア88便。聞こえるか?」
機長「はあ~い。 88ヘビー」
F4パイロット・B「あんた落ち着いてるなぁ。……よしっ。今から突入する。なるべく振動を抑えてくれ」
機長「あらあら……」
F4パイロット「難しいのは分かっているが、頼む」
機長「了解。うふふ」
‐14:19
F4パイロット・B「行くぞ。カンさん。アイハブ・コントロール」
F4パイロット・A「おお。ユーハブ」
‐13:54
航空機関士「正面にファントムを視認! 来ます!」
機長「エンジンの同調、お願い」
航空機関士「はい!」
機長「操縦を手伝って」
副操縦士「はひ!」
‐13:43
F4パイロット・B「カンさん、主翼には当てるなよ。ヘタすると燃えるよ」
F4パイロット・A「ちょっ、おま……今さら……」
‐13:39
副操縦士「…うっ。くぅ……ゆ、揺れる」
航空機関士「がんばれ!」
機長「あらあら。リラックスよ。力を抜いて……うふふ」
副操縦士「は、はひっ」
‐13:28
F4パイロット・B「射撃まで、あと、10、9、8、7……」
‐13:22
機長「合図で手を離してね」
副操縦士「は、はひっ」
‐13:21
F4パイロット・B「6、5、4……」
‐13:20
航空機関士「来ます! 突っ込んできます!」
‐13:18
F4パイロット・A「3、2、1……」
‐13:18
機長「今よ」
副操縦士「はひ!」
機長「えーい!」
‐13:15
F4パイロット・B「撃て!!」
ー射撃音。命中音。 破壊音。
第四エンジンが脱落していく音。
すれ違うファントムの音。
アリア航空88便は安定を取り戻した。
‐13:00
副操縦士&航空機関士「やったあぁぁぁぁ!」
‐12:57
機長「ファントム、パイロットさん。お見事です。ありがとう」
F4パイロット・B「ああ、さすがは、カンさん。さすがは、野生児」
F4パイロット・A「ウッホッホッ。ってちがーう!(笑い声) ……お見事なのは機長、あなたの方だ」
機長「あらあら」
F4パイロット・A「こちらの射撃のタイミングに合わせて、ぴたりと揺れを止めた。すごい操縦です」
機長「うふふ。ありがとうございます」
航空機関士「はい。機長は『三大妖精』のひとりですから」
F4パイロット・A&B「『三大妖精』?」
副操縦士「はひ。機長は我が社において、他のふたりの女性パイロットと共に、『妖精』と呼ばれるほどの技量を持つ、トップ・パイロットのひとりなんです」
F4パイロット・A「妖精か……」
F4パイロット・B「ああ。まさに妖精だな」
機長「あらあら。うふふ……(笑い声)」
‐12:04
副操縦士「あ……あの。さっきは、すいません」
航空機関士「わ、私もごめんなさい」
機長「ん? どうしたの」
副操縦士「第四エンジンが脱落した時。 一瞬、パニックになっちゃって……どうしたらいいか分からなくって……」
航空機関士「私もです……」
機長「あらあら。 いいのよ。 私だって恐かったもの。 みーんな、一緒。 うふふ」
副操縦士 「機長……」
-11:31
機長「さあ、帰りましょう」
副操縦士&航空機関士 「『 はい!』」
‐11:02
ディパーチャー「アリア航空88ヘビー。着陸進入を許可します」
副操縦士「アリア航空88ヘビー、了解。着陸進入を開始します」
ディパーチャー「緊急車両の配置完了。いつでもどうぞ」
副操縦士「さんきゅー」
‐10:49
副操縦士「着陸しますか」
機長「ええ。 でも慎重に。うふふ……」
副操縦士「こちらアリア航空88ヘビー。 着陸します」
デパーチャー「了解。アリア航空88ヘビー。 着陸を許可」
副操縦士「さんきゅー」
‐10:27
機長「あら?」
F4パイロット・A「どうした、アリア88便」
デパーチャー「またトラブルでも?」
航空機関士「灯り…」
副操縦士「はひ?」
‐10:01
【突然。操縦席内の電源が落ちた。後の調査で、激しい振動と脱落の衝撃で、回線の一部がショートしたものと判明した】
‐09:54
副操縦士「メイン・パネルの電源が落ちました!」
デパーチャー「なにぃぃぃ!?」
‐09:47
副操縦士「速度計も高度計も進路計も、すべてダウン」
航空機関士「動力系のパネルも落ちました。原因不明」
F4パイロット・A「大丈夫か?」
‐09:36
副操縦士「でも、操縦には支障ありません」
航空機関士「聞こえてくるエンジン音もノーマル。異常は感じられません」
‐09:28
副操縦士「それに無線はちゃんと、通じてるみたいです」
航空機関士「なら、大丈夫ですね。きっと」
機長「あらあら。ふたりとも落ち着いてるわね。うふふ」
‐09:18
航空機関士「えへへ~。誉められちゃいましたぁ」
副操縦士「なんだか、こそばゆいね。えへへ」
機長「あらあら」
-09:12
F4パイロット・A「なんだかなぁ~おい、 クリ。 後ろにつけるぞ。誘導を頼む」
F4パイロット・B「了解。いい雰囲気だ(笑い声)」
デパーチャー「まったくだ……やれやれ」
-08:58
F4パイロット・B 「 アリア航空88便。 滑走路は視認しているか?」
機長 「はあい。 滑走路34Lは目視で視認」
F4パイロット・B 「了解。 なら進路は大丈夫だな。 高度と速度を逐時、通報する」
機長 「はあい。 お願いします」
-08:15
副操縦士「こちらはアリア航空88ヘビー。 今から着陸進入を開始します」
デパーチャー「了解。アリア航空88ヘビー。 グッド・ラック」
機長 「さんきゅー」
-07:46
F4パイロット・B 「現在、高度1000フィート。 速度、120ノット」
副操縦士「ファントム・パイロットさん。 ギアは全部、降りていますか?」
F4パイロット・A「ああ。 大丈夫。 スリーグリーン。 三つともちゃんと降りてるぞ」
副操縦士「ありがとうございます」
-07:31
航空機関士「燃料もちゃんと止まっていますか?」
F4パイロット・B 「 現在、燃料の流失は認められない。 ちゃんと止まってる」
航空機関士「ありがとうございます」
-07:24
F4パイロット・A&B 「『 どういたしまして 』」
機長「うふふ。 みんな、ありがとう」
-07:13
F4パイロット・B 「高度800フィート。 速度110ノット」
-警報音 「グランドスロープ」及び「テレイン」 鳴り出す。
-06:59
F4パイロット・B 「高度600フィート。 速度100ノット」
-06:22
F4パイロット・B 「高度400フィート。 速度90ノット」
-06:10
デパーチャー「アリア航空88ヘビー。 グライド・パスに乗っている」
副操縦士 「了解」
-05:59
F4パイロット・B「高度300フィート。 速度90ノット」
機長「ゼロ・トリム」
副操縦士「ゼロ・トリム」
-05:37
F4パイロット・B「高度200フィート。 速度80ノット」
機長「フラップ、25度」
副操縦士「フラップ、25度。 フ ラップを25度にします」
F4パイロット・A「フラップの展開を確認した」
副操縦士「ありがとうございまさす」
F4パイロット・B「カンさん。こっちの機体が揺れてるぞ! 押さえろ!」
F4パイロット・A「よっ。 とはっ!」
-05:24
副操縦士「ファントム・パイロットさん。 無理しないでください」
F4パイロット・B「こちらは大丈夫。 野生のカンで操縦している」
F4パイロット・A「ウッホッホッホッホー」
ー 操縦席内に、小さな笑い声が響く。
-04:57
F4パイロット・B「高度100フィート。 速度80ノット」
航空機関士「スピード・ブレーキ・レバー」
副操縦士 「ファントム・パイロットさん、ありがとう」
-04:42
F4パイロット・B 「高度80フィート。 速度70ノット」
デパーチャー 「アリア航空88ヘビー。 降下正常」
-04:22
F4パイロット・B「高度50。30」
航空機関士「着陸前チエック・リスト、完了」
F4パイロット・B「20……10………」
デパーチャー「行け! 行け!」
F4パイロット・A「がんばれ! そこだ!」
航空機関士「みんな、がんばって! スポイラー展開。 第一、第三エンジン、逆推進装置、準備完了」
F4パイロット・B 「3、2、1.今!」
- ドスンッ! と着地する音。
-04:05
副操縦士「タッチ・ダウン!」
F4パイロット・A「やった!」
デパーチャー「うまい!」
F4パイロット・B「お見事!」
-04:00 機長「リバース!(逆噴射)」
- ゴウッ と逆推進装置が作動する音。
-03:49
副操縦士「減速中。 ええと…速度が分からない……」
F4パイロット・B「そのままゆっくりと減速を。 ゆっくりでも大丈夫」
副操縦士 「はひ。 ありがとうございます」
- エンジン音。 がたごと音。 次第に小さくなっていく。
-03:03
航空機関士「OK。 逆推進装置。 ライト・アウト」
-02:52
機長「停止……」
【こうして、アリア航空88便は緊急着陸に成功した。 しかしテープはまだ少し続く】
-02:48
副操縦士「えー、管制塔。 あ りがとうございました。 こちらはエバーグリーン。 アリア航空88ヘビー。 みなさんに、お礼を言います」
デパーチャー「アリア航空88ヘビー。 無事で良かった。 お帰りなさい」
副操縦士「はひ。ありがとう……本当に... 本当に、ありがとうございました」
デパーチャー「(照れたように) えーあ~ さんきゅー」(歓声)
-02:36
機長「ふたり共、ありがとう」
航空機関士「いえ……そんな」
機長「私が、いたらなかったせいで、ふたりを危険な目に会わせて、ごめんなさい」
副操縦士「とんでもありませんよぉ。 私達が無事着陸できたのは、機長のおかげです」
航空機関士「そうですよ。 心から感謝しています」
機長「あらあら……ありがとう………」
-02:02
F4パイロット・A「百里680号から、アリア航空88便。 どうぞ」
副操縦士「はひ。 ファントム・パイロットさん。 どうぞ」
F4パイロット・A「見事な着陸だった」
F4パイロット・B「素晴らしい手際でした」
-01;50
機長「うふふ。 ありがとうございます。 今度、奢らせてくださいな」
F4パイロット・A「ええ!? マジで? ホントに!?」
F4パイロット・B「はいはい、カンさん。 よだれ、よだれ。 680号、了解。 いつでも、喜んで」
航空機関士「その時は、私をファントムのパイロット席に座らせて下さいね」
F4パイロット・A「お安い御用! でもね、お嬢さん」
航空機関士「はい?」
-01:34
F4パイロット・A「俺達はパイロットじゃない」
航空機関士「パイロットじゃない? えー、それって、どうゆう……」
F4パイロット・A「俺達は自分達の事を、ライダーって呼ぶんだ」
航空機関士「ライダー?」
F4パイロット・A「そうともっ。 俺達は、天下無頼のファントム・ライダー。 風のむくまま、気のむくまま。 ぶははははぁぁ…痛っ!!」
F4パイロット・B「カンさん。 バカな事言ってないで、RTBするよ」
*RTB(Return To Base) 基地への帰還を意味する軍事航空用語。
-01:22 F4パイロット・A
「うう……お前ってホント。 クールだね。 さすがは人間コンピューター。 …痛っ」(笑い声)
-01:11
F4パイロット・B「それでは、アリア航空88便。 さようなら」
F4パイロット・A「お嬢さん方。 また、どこかの空でな」
航空機関士「はい。 また。どこかの空で」
副操縦士「はひっ。ぜひ また、お会いしましょう」
機長 「あらあら。 こちら、アリア88。 アウト。 テイク・ケア(さようなら) うふふふ」
【 轟音を残して680号が飛びぬけて行く。 操縦席の三人は、その姿が見えなくなるまで手を振っていたようだ】
-00:22
航空機関士「あの。 誰か私にキスしてください」
副操縦士 「アイちゃん?」
航空機関士 「誰か私を抱きしめて、キスして、生きてるぞ! って言ってください」
-00:09 機長「あらあら。 じゃあ、私がしてあげるわ……」
-00:03 副操縦士「あっ、私も、私も」(笑い声)
【テープ終了】
後の調査ではー
1) 激しい。
恐らくは他に類を見ないほどの激しい乱気流によって、第二エンジンはパイロンもろとも脱落していた。
2)その際、スラットとフラップを破壊したものと思われる。
3)またパイロン部分に金属疲労による「ひび」が生じていた事が判明した。
4)第四エンジンもまた、第二エンジンと同じ原因で停止、脱落したものと考えられる。
5)第二エンジン及び、第四エンジンの脱落(海上)による被害は皆無だった。
6)自衛隊機の民間航空機に対する実弾射撃については、一時期、問題となったが、アリア航空側からの自衛隊に対する感謝の表明や、
管制官達の緊急時のやむを得ない処置であった ーとの証言もあり、それ以上の問題にはならなかった。
この件については、全自衛隊のみならず、アメリカ四軍、そのすべてからパイロットに対する擁護の声が上がり、それを上層部が無視できなかった結果だった ーとの噂もある。
あげくの果てには、ホワイトハウスから直接、政府への圧力があったとの証言もある。
だが常識的に考えて(いくら個人的的にとはいえ)
アメリカの大統領が、いち自衛隊のパイロット(この場合はふたりだが)に対して、内政干渉とも思われかねない危険を犯してまで、政府に対して圧力をかけるハズもなく、これは単なる都市伝説のひとつだとして考えられている。
等の「Incident(出来事)」が報告されている。
ARIA航空88貨物便の乗員は全員生還した。
CVR Incident ー08 『帰還』 end
ETA= en Estimated Time of Arrival
航空機 船舶 車両 あるいはコンピューター・ファイルが ある場所に着くと予想される時間、時刻の事・「到着予定時刻」
きっと彼女達の、最後の数行の台詞の為に、この作品郡は書かれたのだと思います。
ごめんなさい(チキン・ターキー鹿馬)




