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僕と花  作者: 佐倉 夕夏
インパチェス―鮮やかな人
12/14

フジバカマ―あの人を思い出す

時は経過して、時代も変わる。

俺はあの恋からもう4年経過していた。

そう26歳、社会人ももう慣れたころだ。

「暑いですね~今日。香川さん、その上着脱いだ方がいいっすよ」

俺にも今年新入社員が付くようになって、いまは営業を1本終えて、ベンチで一休みしていたところだった。

新人が買ってきた冷たい缶コーヒーを飲みながら俺は上着を脱いだ。

「初夏ですねぇ、もう夏はすぐそこですね」

暑い、暑いと言いながら手を仰ぐ。

「なぁ。毎年営業には地獄だよなぁ」

風が時折吹いて遠くの西の空は夕日が見えていた。

「この資料、届けてくれたら今日は直帰していいぞ」

A4サイズの茶封筒えお手渡す。

「え!!いいんですか!!」

「今上からそう言われたから。もう俺も1件よって帰るし」

「ありがとうございます!!」

「デートか?」

「・・まぁ、そうです」

こう照れる彼を見ると何故か葉山君がよぎる。

今でも彼はあのはにかんだ笑顔で働いているのだろうか。

「じゃぁ、行くわ。あとよろしく」

「はい!お疲れ様でした!!」

俺は頭を下げた新人に手を振りメトロで九段下まで移動した。

企業に資料を渡すと、日はもう落ちて夜のとばりが落ちる頃だった。

「さ・・帰るか」

今日も変えると、一人晩酌だな。なんせ今日は華の金曜日だ。

背伸びしてメトロの駅に入ろうとした。

「・・香川さん?」

名前を呼ばれて振り返ると、そこには見覚えのある女性がいた。

淡いピンクのシャツに黒いスラックス。ヒールは赤。

長い髪をまとめてその人は俺をみた。

「・・もしかして、桜井さん?」

「はい!お久しぶりです!」

何と昔好きだった彼女が目の前に現れたのだ。

「ど・・どうしたん?」

「どうしたん?ってあたしの会社、九段下ですもん。今ちょうど帰宅です」

「あぁ・・出版社、だっけ」

彼女はとある雑誌のライター志望で、あっさりと夢をかなえた。

彼女は言うまでもなく綺麗なままだ。

「そうです。今から帰りですか?」

「うん」

「予定とかあります?」

「いや」

「じゃぁ、ごはんでもいきますか!」

「うん・・え?」

俺はこのとき浅はかながらまだ可能性があるのではと考えた。

「今から優君と食べるんだ、ごはん」

「優君・・って葉山?」

「はい」

「まだ続いてるの?」

「えぇ。あ、電話だ、もしもし?優?今終わったーそれでねー香川さんが・・・」

俺は電話が終わるのを待ってまた話しかけた。

「いや・・ほら2人きりの方がいいいでしょう?」

「何でですかー久しぶりにみんなで飲みましょー」

「いや・・その・・」

「明日香!」

その声は駅の方から聞こえた。

かっちりとスーツで決めた葉山君はとてもかっこよくなっていた。

「あ、香川君!久しぶりですね~。元気でしたか?あ、そうそう、もう一人、呼んじゃった」

かつかつ、とヒールの音が響いて、葉山君は後ろから出てきた。

「久しぶり!」

その姿にもう一度驚愕した。

何と、神が少し伸びた麻衣ちゃんだった。



***

「まさかのメンツそろったねー」

俺の周りには今かつての仲間が勢ぞろいしていた。

桜井さんはライターが、葉山君はたしか、管理職、

麻衣ちゃんはアパレル、俺は営業と全く違う職種を歩んだ。

「麻衣さんまで来るとは、びっくりです!」

「あんなー偶然丸の内で会ったんだよ、葉山君に。それより、あんたたちまだ続いてるんだね?」

「すぐ終わらすとでも思った?」

「そんなことしたら、許さん」

「でも俺もびっくりしちゃったなぁ。まさか桜井さんと会うとは」

「ねぇー!あたしもびっくりしました」

「とりあえず!今日は、飲みましょう」

4人でいろんな雑談をして気づくと時間はものすごい勢いで過ぎていた。

麻衣ちゃんは少しできていて、珍しく桜井さんも飲んでいた。

隣ではお酒を飲まない葉山君がいた。

「あれ、飲まないの?」

「あぁー今日俺車なの」

「でも、さっき駅から来たじゃん」

「違う違う。麻衣ちゃんが」

麻衣ちゃんはその話を聞いたのかこちらに来た。

「麻衣ちゃんが、何よ?」

「メトロの駅で迷ったってゆうから、迎えに行っただけ」

「もう26になるのに迷うかーふつう」

「うるさい!!」

と言いながら俺と葉山君のグラスをお酒を次々と出す。

その隣で笑いながらお酒を飲む桜井さんがいる。

その時間は最高だった。

想いでは確かにきれいなものに変わりつつあった。

トイレに席を立った桜井さんと、電話が来た葉山君が席を外した。

俺と麻衣ちゃんが残された。

「何か、変わったことは?」

俺はそう麻衣ちゃんに聞いた。

「うーん。変わらないなぁ。仕事に慣れたぐらい?香川君は?」

「俺も、そんな感じ。今日も営業だったし」

「へぇー彼女は?できた?」

「いや、残念ながら。そっちは?」

「同じく」

「相変わらずダメだな、俺ら」

「ね?一生独身かも?」

「じゃぁ、お互いが50になっても独身だったら考える?」

「はは、そうだね」

その時の俺は酔っていたんだと思う。

その言葉に別な意味はなくて、冗談を言った。

「楽しそうですねー、仲間に入れてくださいよー」

「何々、俺も」

俺と麻衣ちゃんは2人で「秘密ー」と言った。

そういえば、あの時もこうやって2人で話したっけな、そう思った。





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