第6話
久しぶりに会うかづきちゃんはまるで別人だった。また日々が戻ってきたと思っていたけどそれは僕だけだった。
何があったの、ときいてもかづきちゃんはだんまりだった。それから1時間くらい僕は何も聞かなかった。そしたら、かづきちゃんの方から話し始めた。この傷たちは「新しく付き合った恋人にやられた」のだと教えてくれた。
LINEをブロックしてしまっていて、電話番号も付き合っていたのに知らなかったせいで僕に連絡が出来なかったらしい。僕がきっと家で寝ているだろうと思って、記憶を頼りに僕の家まできたところだったと言っていた。キャリーケースには、新しい恋人の家に置いていた荷物を持ってこれるだけ詰め込んできたらしい。
家に帰るとその恋人がいるかもしれないから、数日僕の家にいていいかと言ってきた。別に僕に恋人はいないし、このまままたかづきちゃんが痛い目をみるのも嫌だと思ったので、母親にすら渡さなかった合鍵をかづきちゃんに渡すことにした。
そこからまた、僕とかづきちゃんはワンルームで生活をした。ただ、その生活は長くは続かなかった。僕が夜勤の時にかづきちゃんは出ていってしまった。僕はてっきりこのままよりを戻すと思っていたから、また心のなかがすっぽりとカラになってしまった。かづきちゃんからLINEで「戻る、ごめんね」と一言。それからLINEはブロックされてしまっていて、かづきちゃんと連絡を取る手段はなくなってしまった。
それから僕は2回生になって、チューターのバイトがあって、僕の2回生の春・新学期が始まった。天文部の部室に行くとかづきちゃんは何食わぬ顔でそこにいた「あ、おはよぉ~」と、別れる前のような錯覚に陥る。最後に部室で会った時はまだ恋人だったから―――。
それからかづきちゃんがボロボロの姿になることも、髪がギザギザになることもなかった。きっとうまくやっているのだろう。そう思っていた。僕の事も「紅葉“くん”」と呼び、僕も「かづきさん」と呼んで、上下関係を示している。
もう、きっと僕の家に来ることもない。そう思っていたのに、だった。