7 佐々木と吉村
「おう、お疲れ」
会議室を後にして、佐々木に声を掛けた。
「あ、吉村さん、お疲れ様です」
「お前、どう思う?」
「そうですねー…七海が蕎麦を食べさせたのは間違いないですし、動機は別れ話のもつれ…も間違いないんじゃないですか?
料理中に蕎麦を入れるなんて余裕ですし…」
「う〜ん…そうなんだけどなぁ…得がないだろ」
「え?とく…ですか…」
「そ。七海の動機…拓海との別れ話のもつれで殺した。は弱いんだよ。得がない。この事件で1番得をするのは…実は早紀なんだよな…」
「…でも、別れ話のもつれで殺されるなんてよくあるじゃないですか。
それに早紀はどうやって拓海に食べさせるんですか?」
「う〜んそこだよな。…調味料には入ってなかったんだろう?」
「はい。どの調味料からも検出されなかったそうです。しかも七海は奥さんにバレるのを避ける為、形跡を残さないよう、使った調味料は一つ一つ丁寧に口を拭っていたそうですよ」
「かーー…くだらねぇ。バレないように必死になったのが仇になったか…食器類はどうだった?」
「使った食器等は、こちらは拓海が妻にバレないようにと、徹底して洗っていますので指紋は拓海ののみですし、蕎麦の検出は出来ませんでした」
「食器はなぁ…どの食器を使うかわからなければ仕込む事はできねーしなぁ…
ばかみてーに綺麗にされちまったら何も残らねーなぁ…」
「はい…」
「もし早紀が入れたとしても…蕎麦の入手先もわからねーしなぁ」
「はい、早紀は蕎麦アレルギーの拓海の為、蕎麦に関する取材も一切断っていたそうです。
過去に一度長野での取材をしていますが、お土産と渡された蕎麦粉さえ上司に渡しています。かなり徹底していたようです」
「そもそも早紀は拓海と七海の関係を知らなかったんだろう?」
「はい、今回の事で、夫の不倫とその最中の死亡でかなりショックを受けている様子です。
仕事も出張はしない部署への移動願いを出したそうです」
「…まー…そりゃあ、いくら不仲とはいえ…相当ショックだろうなぁ…」
佐々木がうんうんと頷く。
「ちなみに、早紀の交流関係など調べましたが、他に男がいたとかそういうのは全くありませんでした」
やはり早紀は関係ないのか。
「うーん……じゃあ…ちょっと話しでも聞きに行くか…」
「早紀に…ですか?」
「ちげーよ。関係のない関係者のところだよ」