プロローグ!
やっぱり慣れたら普通の生活が一番です。
「もはや残る手立ては勇者降臨召喚の儀式しかないというのだな?」
「はい!国王陛下、妃殿下、宰相殿、大臣!何とぞ御再考を!」「国王陛下!」「王妃殿下!」「宰相殿!」「大臣!」
侯爵ら貴族達の進言ののち長い沈黙が続いた。
勇者降臨の召喚の儀式には神の神託を受けた祭司と聖女と神官更に有力な魔導士10~30名での命を懸けた儀式を執り行う。
無事に召喚が成功するという保証はない。
失敗し儀式を執り行う祭司や聖女や神官及び魔導士達全員の命も失う可能性の方が高い。
戦力温存を考慮すれば勇者降臨召喚の儀式など行わない方が良い。
魔王の復活による魔物、魔獣の活性化。
更に国境周辺国からの侵略。
現在の王国の損害を鑑みればそれに縋るほかがないのも実状である。
国王も王妃も宰相も大臣達も安易に承諾しかねていた。
「…では大司教と聖女と教皇三名に召喚の許可の神託が降りたのちに儀式を執り行う。それでよいか。皆の者。」
「「「はっ!御再考有り難きに御座います!」」」
俯いたままうっすらと口角を持ち上げ笑みを浮かべる貴族達。
貴族達は国王達に会釈したのち謁見の間から足軽く退場していった。
自らの領地からの私兵の損失を出さずにすむ事、儀式が失敗すればそれはそれで強大な軍事力を持った教会や王族の戦力を削り反旗を翻し王族を追い落とす事も容易にすすむ。
勇者降臨召喚の儀式は貴族らにとって旨味しかない。
権力や領地拡大に飢えた貴族達には今こそが絶好の好機なのだ。
是が非でも執り行ってもらはねばならない。
貴族達の横顔が見える宰相は沸き上がる怒りを表情に出すまいと必死の想いで抑えていた。
(故奴ら己の損得勘定しか頭にないとは嘆かわしい!国王陛下…)
「ユーグリウス宰相、辺境爵らの元に補給物資と一師団を送り届けよ。残りの兵士師団、魔導士団、近衛師団で王都周辺都市の護りを堅めよ!最悪時内側から喰われてしまう。民に被害が及ばぬ様に手配せよ!すまぬな。まだ喪も明けぬうちにそなたに重責を負わせてしまうが頼む。」
「陛下の御命令とあれば如何様にも致します!父に替わりお任せください!では手配にむかいます。」
前宰相ヤヌリウスが胸の病に倒れその喪中での緊急の召集だった。
若くして宰相となったユーグリウスに対しての伯爵ら貴族派の嫉妬による嫌がらせでもあった。
はい!プロローグ!