よかった、奴隷になれて
本作は短編『よかった、追放されて』の続編となっております。
https://ncode.syosetu.com/n3727hf/
突然だが、勇者を倒した魔王が何故か俺の目の前にいる。
どうしてそんなことになってしまったかというと、俺が勇者パーティを追放されたからだ。
俺は勇者パーティの荷物持ちをしていたのだが、役立たずは不要だと言われ、パーティハウスから追い出されてしまった。
ギルドの会員証を忘れたことに気付き、パーティハウスに取りに戻ったら、俺を追放した勇者達が魔王にやられていたのだ。
「聞いて驚け! 朕……ええい言いづらい! 妾は魔王! 妾を害しようとする勇者とその仲間を滅しに来たのじゃ!」
「ええー! そうなんですか!」
魔王の機嫌を損ねないように、大袈裟に驚いた振りをする。魔王は可愛らしい幼女の見た目をしているが、とんでもなく強い。
魔族を滅ぼすと言われる聖剣を持つ勇者を、見るも無惨な姿に変えたのだ。スキルも魔法も使えない俺が敵うわけがない。
「どうじゃ、恐ろしいであろう」
「はい、とても恐ろしいです」
「そうかそうか。ところでお主、奴隷に向いている顔をしているな?」
奴隷に向いた顔ってなんだよ……。
「さっきは見逃してやると言ったが、気が変わった。今からお主はこの魔王の奴隷とする」
拒否権はない。逆らえばまず間違いなく殺されてしまうだろう。
「はい、分かりました……」
「ハーハッハッハッ! 人間が魔族の奴隷になるなど耐えがたい屈辱であろう? お主はこれから地獄の日々を送るのじゃ」
くそ! 何で俺ばっかりこんな目に遭うんだ!
「まず、食事は一日三回しか与えん。食事の少なさのあまり、お主は餓えに苦しむであろう」
え?
「週の半分は労働をしなければならない。休みの少なさのあまり、お主は忙殺されるであろう」
えええ……。
「そしてドラゴン一匹が羽を広げられる程度の狭い部屋で寝泊まりするのじゃ。息苦しさのあまり、お主はストレスで発狂するであろう」
結構広いよ? その部屋。
「極め付きには、グリフォンの抜け落ちた羽毛で作られた柔らかいベッドでお主は寝ることになるのじゃ。寝づらさのあまり、お主は一睡もできなくなるであろう」
マジで!? 超高級ベッドで寝れるの!?
「怖いであろう? 魔族が一ヶ月として正気ではいられぬ環境にお主は身を置くことなるのじゃ。ハーハッハッハッ!」
いや、天国じゃん! 何だったらずっと奴隷のままでいいよ。
よかった、奴隷になれて。
最後まで読んで頂きありがとうござました。