狩り
ギニと狩りにやってきた。今日は鹿を仕留める。そうそう、俺の名はアルフレット、村長の一人息子だ。予定では妹か弟が今年生まれるようだった。これは嬉しい。豚面だが愛嬌のある顔をしているためにどこか憎めないそんな家族や村人たちであった。そしてオークは発情期意外に人を襲ったりしない。そんな研究もあるとかないとか。実際うちの村では番いのオークがいて人間を襲う事はない。しかし、人間たちからは、女をさらわれる厄介者として見られている。そんな現状を変えていきたいと思う俺であった。
「ギニ、あそこに鹿が見えるか?二股に分かれた木のすぐそばだ。」アルフレット
「へい、見えます。どうやって仕留めます?」ギニ
「そうだなぁ、エアーカッターでいいだろう。行くぞ?」アルフレット
「へい。」ギニ
「エア、カッター。」
小さく呟いて鹿を仕留めた。首から先がなくなった鹿を担ぐ。かついでいく。ギニも顔を持ち上げてこちらを見ている。
「顔も持って帰るか。頼んだぞ?」アルフレット
「へい。」ギニ
持ち帰った俺たちは早速皮を剥ぎなめしていく。俺は器用なので皮を破ることなく、そして肉もつけずに終えることが出来た。皆が感嘆の声を漏らす。手際もそれはそれはとても見ていて飽きない職人の技のようであった。女衆も手元を見て感心していたようだった。見世物は終わりとばかりに人を散らす。次は鹿のトロフィーを作る。鹿の頭を飾る骨だけのあれだ。時間がかかるので下処理をして今日は終わりにする。鹿皮は燻してノミを除去する。オークも煮炊きするので火は起こせる。それも原始的なやり方でだ。俺は干し肉を作る準備をする。人間相手に商売するときのために取ってある。これまでに作ったものも置いてある。この前助けた少年に持たせたっきりである。
獣人族の子供だった。近くに集落があるらしく迷い込んできていた。勿論人語を理解する俺なので十分に伝わったようだった。でも最初は戸惑っていたようだった。干し肉を与えると大人しくなった、なので獣人族とはこれから交流ができるかも知れない。と思ってたら。早速子供が大人を連れて現れた。俺の村はある程度人語を話せるようになっている。俺の教育のたまものだった。何よりそういう知識を吸収したがっていた村人たちなのでそれが幸いした。それよりも今は獣人族だ。
子供によっと手を上げて挨拶する。するとぺこりと頭を下げてきた。オークでも話せるオークと話は通っていたらしく話しかけてきた。
「これはこれは、先日うちの息子が世話になったそうで、その節はありがとうございました。肉までもらってしまって申し訳ありませんでした。」
「いえいえ、こちらでは肉は消費しませんのでちょうど良かったのです。美味しくいただいてくれましたか?」アルフレット
「はい、香草が使われておりとても美味しかったです。良かったら取引させてもらえないでしょうか?」
「ええ、いいですよ、うちでは余っておりますので、どうぞ沢山持って帰って下さい。代価は木の実がいいんですがありますか?」アルフレット
「ええ、あります。一度取りに帰るので少々お待ちください。」
「はい、お名前をうかがってもよろしいですか?」アルフレット
「はい、申し遅れました。ザックと言います。村の者を連れてまいりますのでどうか警戒なされないでください。」ザック
「はい、わかりました、じゃあまたね。」アルフレット
「はい、おじさんありがとう!」ジーク少年
「こら、お兄さんだろ?言い直しなさい。」ザック
「はい。お兄さんありがとう!」
「まあまあ、いいですよ、多種族からしたら年齢なんかわかりずらいでしょうし。気にしてませんよ。ああ、そうそう、私の名前はアルフレットと言います。よろしくお願いします。」
「こちらこそよろしくお願いします。」
「では、」
「はい、では」
「じゃあねー!」
「バイバイ」アルフレット
そう言って別れた。村の外でばったり会ったので今は外にいる。背中を見送って肉の準備をする。沢山あるので箱に入れて準備した。それからしばらくして村に五人の獣人が訪れた。子供はいない。手には桃やこくわなどの木の実が沢山持っていた。袋からあふれ出している。それが五人。俺は満面の笑みで五つの箱をドスンと重ねて置いた。
五人の獣人さんは笑顔が引きつっているがそれでも何とかザックが話しかけてきた。
「前の分もありますし私たちのほうが多くなるように持ってきたつもりだったのですが予想外でした。こんなに肉があるとは思いませんでした。申し訳ない。追加で何か持って来ましょう、何がいいですか?」ザック
「ええ、じゃあ袋や着るもの等をいただけたら嬉しいです。肉はまだありますので。等価交換と行きましょう。前にあげたものは送りものですので気にしないで下さい」アルフレット
「ではありがたく貰っておきます。どうにもかないそうにありませんので。」
「あはははは、それは良かった。子供にあげたものですから、そんなにかしこまらなくていいですよ。」
「ありがとうございます。本当になんといっていいのやら。子供を助けていただいただけでなく食糧まで分けて貰えるとは思いもしませんでした。この幸運に感謝を。」
「まあまあ、どういたしまして。」
「では一旦村に帰ります。」
「そうですか、こちらこそありがとうございます。」
「いえいえ、では」
「はい、では」
その後も細々としたものを交換しながら交流は続いている。そしてうちの村の村人たちだが、みんながみんな魔法を覚えて一回り強くなっていた。武術の訓練もしておりみんな上達していた。それは長老とて同じことであった。小さな子から大きな年寄りまでみんながみんな強くなっていた。そんなある日のこと一組の冒険者が村に侵入した。