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第十四話


 マケインの部屋へ案内されたユーマは、森でマリーたちと会ってからの話をしていく。

 途中途中でマリーがユーマのかっこよさを説明するため、どうにも照れ臭かったが、その話はマケインの興味を刺激し大いに盛り上がることとなった。


「いやあ、ユーマ殿はすごいのう。あのレッドベアを一瞬で倒してしまうとは……。それでいて使っている能力は収納魔法一つ。いや、まあ収納魔法というのは名前だけ聞いたことはあるだけで、ワシもマジックバッグと同じようなものだと思っていた」

 マケインは冷静になって考えてみると、これまでの人生の中で収納魔法を使えるという人物に会ったのはユーマが初めてだった。


「そうか、大したことのない能力だと思われていたから注目されていなかったが、実のところ使いこなせれば屈指のものに……」

 そこまで言ったところでマケインは言葉を止めてユーマを見る。


「いや、そもそも使える者の存在すらいなかったのかもしれないな」

 マケインの予想は当たっている。なぜかわからないが、名前だけは時折浮上する収納魔法だったが、世界が出来上がってから今日まで収納魔法を使えるのはユーマだけだった。


「まあ、ちょっとした便利魔法って感じにしか使わなくて表に出てこなかっただけかもですけどね」

 当のユーマはそんな事実を知らないため、自分で思っていたことを口にする。


「なんにせよ、ここまでの応用力をもって収納魔法を使えるのはユーマ殿だけであろう。さすがの一言だ……しかし」

 ここまでユーマのことを褒めちぎってきたマケインの表情が険しいものになった。


「この能力に関しては外に漏らさないほうがいいじゃろ。お主の力は特異過ぎる。知った者が利用しようと近づいてくるかもしれんぞ。まあ、うちにいる限りはそんな輩には断固として対応するからゆっくりしていくといい」

 マケインは口角をあげてニヤリと笑う。身内に対して絶対に手を出させないという強い意志が感じられる。


「それは助かりますが……いいんですか? 正直、俺なんか素性の知れない怪しいやつですけど」

 自分が召喚された者だとは言えない。城でのことも言えない。死んだことになっているとも言えない。言えないづくしであるため、領主として看過できないのではとも考えていた。


「何を言っておる! 大事な孫娘と大事な部下の命の恩人に報いることになんの問題があるというのだね!」

「……ぷ、ははは。やっぱり親子ですね、マークスさんも似たようなこと言ってくれましたよ。うん、お言葉に甘えます。迷惑かけるかもしれませんが、その時は全力でやりますので」

 思わず笑ってしまったユーマだが、この一家の申し出に感謝し受け入れることにした。


「やった! それじゃ、ユーマ様はしばらくここにいらっしゃるんですね! 嬉しいです!」

 マリーはユーマのことがお気に入りになっており、屋敷に逗留することを素直に喜んでいた。


「うむうむ、マリーも喜んでくれているようでよかった。自分の家だと思って好きにくつろぐといい」

 これもマークスが言っていたことであり、ユーマは再度吹き出しそうになるがあえてそれを押しとどめる。


「誰か、ユーマ殿を部屋に案内してくれ!」

「承知しました、ユーマ様。こちらへどうぞ」

 実のところ、部屋までの移動中にマケインは既に部屋を用意するよう指示を出しており、話の間に完了させていた。


 準備を担当した執事は案内の指示がでるだろうと予想して、部屋の近くに待機していた。


「それじゃ、色々とありがとうございます」

 ユーマはマケインに挨拶すると、執事と共に割り当てられた部屋へと移動する。


 廊下を進む間、執事は無言で何を考えているのかわからず、ユーマは内心で緊張していた、


 そんな気持ちを知ってか知らずか、執事がピタリと足を止めて振り返ったため、これまた内心で身構えてしまう。


「ユーマ様、こちらの部屋になります」

 言いながら執事はゆっくりと扉を開ける。


「……広い。こんなにいい部屋を使ってもいいんですか?」

 城で勇者たちが使っていた部屋よりも広く、家具や調度品もぱっと見で高級だとわかるものが置かれており、まるで国賓を迎え入れるかのようなものだった。


「もちろんでございます。なかなかお伝え出来ず申し訳ありませんでしたが、マークス様、マリー様、そして不肖の弟子二人の命をお救い頂きありがとうございました」

 執事は、深々と頭を下げる。


「あぁ、あなたがラルフさんとアンディさんのお師匠さんでしたか。二人のおかげで道中も快適に過ごすことができましたよ」

「そう言って頂けると少しは救われた気持ちになります。当家でお過ごしになられるとのことですが、何かお困りのことや気になることがあれば、ご遠慮なくお申し付け下さい」

 そう言うと、執事は再度頭を下げて部屋を後にした。


「……ふう、行ったかな。城のベッドとは比べ物にならない品質だな」

 城ではボロボロのベッドの汚れを自分で収納して、更に城の別の場所から毛布やマットを無断で拝借することで使えるようにしていた。


 しかし、この部屋のソレはふかふかで、そのふかふかさゆえに、身を預けたユーマはいつの間にか眠りの世界へと誘われていった。



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