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序章五話 渇望

「まずはステータスの詳細かな。ただこれは言葉で表すのは難しそうだから文字にしてみるよ」


 そう言いながらどこぞの魔法の世界のように指を光らせて何かを書いていく。その文字は確かに読みやすくていいんだけど少しだけ長くなっていて陽菜の悩みが伝わってくるな。俺なりに分かりやすくまとめてみるとこんな感じだ。




 名前〜言わずもがな個人名。

 職業〜その人の才能にあった職業。ステータスの数値に変化が起こる。全員のレベルが低いため職業は一つしか就けられない。

 年齢〜その人の年齢。

 レベル〜上がる事にステータスの上昇や、職業の就ける個数が増えていく。

 HP〜生命力。ゼロになると死亡する。

 MP〜魔力。ゼロになると気絶することがあるが耐性がある人であれば耐えられる。またゼロにすることで回復力が高まったり、上昇したりする。

 物攻〜物理的な攻撃力。

 物防〜物理的な防御力。

 魔攻〜魔法的な攻撃力。

 魔防〜魔法的な防御力。

 速度〜動ける速度。

 幸運〜運の良さ。

 固有スキル〜スキルの上位種であり持たない人も多くいる。また獲得するための条件が厳しいため一つでも持っているだけで重宝されやすい。

 スキル〜その人の持つ才能や努力の結晶が言葉として現れ見やすくなったもの。




 こんな感じだな。陽菜の説明だともう少しだけ長くて理解しづらかった。我ながらいい解釈が出来たと思う。それにしてもすごいな……本当に日本ではないってことを痛感させられる。


「ちなみに皆がステータスを見てもローマ字の表記しかされないと思うんだけど。これも詳しいことを言えば違うんだ」

「というと?」

「まずステータスの評価はSSS〜Gまで幅広くあります。優奈の幸運くらいしかSSSは見ることが出来ていないけど、この差ってかなりのものなんだ。簡単に表すのなら蟻と人くらいの差がある」


 蟻と人の差、本能で動く虫と頭を使う人か。

 それは確かに大きな差があるな。そして俺はそれの蟻ということか。分かっていても来るものは来るな……。クヨクヨしていても仕方がないことは脳が理解しているのはずなのにな。


「その中でも見えない数値化がされていてね。Gがだいたい50まで上がればFになるかな。だからレベルアップでも上がっているようには見えないかもしれない」

「……なるほど、伸びているか分からないと思うけど上昇はしているから安心してって言いたいんだな」

「それが本題じゃなかったんですけどね」


 クスッと笑いかけてくる。

 粋なことをしてくれるものだ。まぁ、本当に最初に伝えたかったことはそういうことではなかったんだと思うけど。それでも少しだけ安心した。無職の時点で上昇しない可能性は高かったからな。


「とりあえずは拠点を作るべきだと思うよ。魔眼で見てみたけど王国の始まりの森って名前だけで詳しいことは分からなかったから。生き残りたいのなら最初はサバイバルするしかないと思う」

「食うものとかは……陽菜に頼れば分かるか」

「面倒だけど任せてください」


 俺の真似か、悪くはないな。

 まずは生きていくために、強くなるために必要な養分からだから……肉類か。キノコ類はあれど強くなりながら手に入るのはそれだ。果たして俺が助けられることはあるのかって、疑問はあるけどな。


「陽菜、俺の固有スキルについて教えて欲しい」

「あー、顕現?」

「そうだ」


 拳銃を構えた時に秀が陽菜に聞いた。

 確かに聞きたくなる理由がわからなくは無い。勇者という職業で一番の戦力になるのは明らかに秀だろうからな。固有スキルがスキルの上位種なら使えた方がいいに決まっている。


「想像した場所に武器を作り出せる能力だよ。ただ業物は一度でも触れていないといけない。逆にね……あー、これは説明した方が良さそうかも」

「必要そうなら頼む」

「オケ」


 陽菜が体をバキバキと鳴らしながら何かをスライドしている。俺達には見えない何かで調べている可能性はあるな。それが看破なのかもしれない。俺も少しだけ欲しいって思ってしまう。看破出来るだけでいる理由になるしなぁ……。


「アーティファクトっていう、訳せば古代兵器があるんだ。零の持つ拳銃とかがそれだね。そういうのは所有者が定まってしまう代わりに当人と同じく進化を続けるんだ。そういうのは例え秀であっても顕現させられない。もっと言えば零が魔力さえ込めれば玉も詰まるし私達を殺そうとすれば零なら簡単に出来るかな」

「……それだけアーティファクトってものは強いって言いたいのか?」

「そそ、何で拳銃が零を選んだのかも分からないし、警棒とかの変化は無いのに拳銃にだけアーティファクト化という進化が起こったのかも分からないよ。だけど、私が零を離したくないのは寂しいって気持ちもあるけど純粋な最高戦力を消したくないって感じですぅ」


 所々、好きなアニメか何かの敬語とか、普段通りのタメ語が混ざり込んでいて面倒だけど、確かに陽菜の説明さえ聞けば俺は強そうだな。というよりも、俺の武器が強いのか。勘違いだけはやめておこう。


 そう言えば秀は未だに腰に収納された警棒を刺しているけど、俺と同じような装備とかは書かれていなかったな。陽菜の言い方だと看破は鑑定みたいなことも出来そうだし警棒にも能力を使っていそうだ。その結果でアーティファクトにはなっていないんだろう。……と、長年一緒にいただけの勘で推測してみる。


「大和の奪取もそのまま相手の何かを盗めるってだけで詳しいことは分からないかな。大和の固有のスキルみたいで例がないみたい。同様に優奈のもサッパリ? 看破って言って全能ではないから」

「俺の顕現は例があったってことか?」

「そうだね、昔の勇者で持っている人がいたみたい。もしかしたら秀が生まれ変わりなのかな。気をつけた方がいいよ。その勇者は愛する人のために命を賭したらしいから」


 秀が誰かのために命を落とすか。

 全然、想像がつかないな。女に対して命をかけてまで救う姿は一切、思いつかない。仲間達のために命をかける可能性はあれど……いや、待てよ。となると、俺達が死なないようにするしかないか。


「早く拠点を探しに行かなきゃ。今は魔物って言われる化け物を魔眼の隠蔽で隠しているからバレていないけど、そのうちバレるよ」

「そんなことをしていたのか」

「うーん、一応ね。やっておかないと安心出来なかったから」


 陽菜に小さく「ありがとう」と伝えておいた。

 陽菜は少しだけ頬を赤らめて「もっと感謝しなさい」って言ってきた。こういうところは可愛いんだな。おさげでメガネ……少しだけ悪くないと思ってしまうな。


「何で陽菜だけ得しているの! 私も!」

「後でな」


 優奈の頑張る気力がどこから湧いてくるのか分からないからこそ、否定だけはしないでおく。俺が一緒に行くってことは秀からリーダーを任されるのは確実だろう。異論があるのなら普通に譲るけどな。面倒だし。


「それでどこに行くんだ?」


 ほらな、やっぱり、俺任せだ。

 面倒くさいけど……そうだな……。山が見えるからそっちの逆側へ行くのが良さそうだ。山側へ進んでも山を昇ることになることだけは確実だしな。そこまで行ったところで体力がなければ逃げたりも出来やしない。


「あっちかな」

「了解、俺が一番前に立つよ」


 路地裏を進んだ時のように大和を前にして進んでいく。ただ少し違うのは秀が後ろに回ったことくらいかな。隣はなぜか優奈がいる。まぁ、防御面が高い優奈なら俺の隣の方が都合が良さそうだから良いけどな。


「……そこか」


 拳銃を構えて撃つ。予想通り小さな何かを撃ち抜いていた。大和や秀は特に驚いた様子は見せていないけど女子二人からしたら意外だったみたいだな。開いた口が塞がらないって言葉のままになっている。


 予想通りだ、俺が望めば拳銃が勝手にリロードしてくれている。今も一発だけ撃ったがすぐに銃弾の補充がされているし。……ここまで俺の願いを叶えてくれるのなら名前くらいつけてやった方がいいのかもな。って、思ったら拳銃がまたリロードしたし……これは同意みたいな意味か。リロードするのはいいんだが……俺の少ないMPを使ってリロードするからあまりしないでもらいたい。


「変な音が聞こえていたもんな」

「そうそう、どこか焦ったような呼吸だったから獲物だと思ったんじゃないかな」

「あまり撃ったことがない割には脳天を貫いているようだけど」


 言われてみれば確かにそうだな。

 あまり気にしていなかったから撃ってみて当たったことだけしか頭に無かった。なんというか、言われてみればアーティファクト化してから手に馴染む気がする。撃った時も俺の命中率が上がったというよりも武器が助けてくれている気がするしなぁ。


 ステータスは確かに低いけど日本で生きていた時の経験は無くなってはいないな。そもそも耳がいいって言うのは日本では活躍する場面が少なかったし。後は影を薄くするとかか。尚更、もし通用するのなら俺向きだな。


「顕現」


 少し拳銃に気を逸らしていると秀が七本もの剣を作り出して、俺が撃った方向に飛ばしていた。サクッと何かに刺さった音がしたかと思うと秀が指をクイッと自分の方へ戻していた。同時に帰ってきた剣に刺さっていたのは小さな鬼、顔は気持ち悪いから俗に言うゴブリンだろう。


「初めて使った割には上手いな」

「能力自体が分かれば誰でも出来るだろ」


 フッと褒められて満更でもなさそうだな。

 嬉しいなら素直に喜べっての。面倒くさい。コイツのツンデレに付き合うことが本当に面倒くさい。ムカついたので横腹を小突いてやる。秀はさすがに大和ほどの筋肉は無かったから結構、痛がっている。俺の手へのダメージもゼロだ。


「はぁ、これのどこが足でまといなんだか」

「零ならいつものことでしょ。数値だけで自分を過小評価するんだから」

「……俺達も気を抜いていたら零にあっさり抜かれてしまいそうだ」


 大和がそんなことを言っているけど……お前らが今以上に強くなってしまえば俺の価値がより薄くなるからやめて欲しいな。まぁ、今のうちに助けられるのならニートになっても大切にはしてくれるだろうけど。俺もその頃には気兼ねなくヒモ生活を満喫するんだ。


「陽菜! ちなみにゴブリンは食えるのか?」

「あー、調べたけど美味しくないって。ゴブリンよりも強くて、オークより弱いゴブリンリーダーを狙った方がいいと思うよ」


 なるほど、ゴブリンは不味いと。

 そういう小さなことを覚えておけば生きていくのに困らないからな。俺達に足りないのは明らかなサバイバルの知識だ。もっと言うのなら異世界の知識も薄いと思う。ラノベで軽い知識はあってもそこまで詳しくはないしなぁ……。


「ゴブリンリーダーの特徴とかあるか?」

「えっとね……耳が少し長いのと進化する時に頭にハチマキが巻かれるらしいんだ。さっきのゴブリンにハチマキが巻かれていれば多分それ。でもねぇ、進化しても零や秀なら一撃だと思うけど」


 どこか詰まらなさそうに言うな。

 何だ? 俺達が危険になることでも願っているのか。陽菜の悪い癖がまた出てきたか。どうせ、片方が危険になって片方が助けに行くみたいなボーイズラブ展開を期待してんだろ。俺の戦い方は命を大事に、だ。無茶はしない。


「とりあえずはこのまま真っ直ぐ進もう。ゴブリンリーダーが入れば倒して肉を貰う。今日中に拠点を築いておきたいからな」

「リーダーの意思だ。皆、頑張るぞ」


 全員が小さくオーとか言っている。

 それをやるのなら俺がリーダーとしている意味ないんじゃないか? どうせ、一笑されて説得されて終わりだろうけど。はぁ、こんな面倒な役職を秀とかに早く渡して隠居したい。やりたいことだけをやって生きていきたい……。

ちなみに陽菜は割と説明下手です。零が言われたような言葉で書くと「物理攻撃が高いとね……なんかこう、一撃が重くなるんだよ。日本にいた時の物理法則とかは無視して体重とかに関係なくーー(ここからアニメの話と関連させながらの説明)」のようになるので自主規制必死で書けませんね……。


次回は十七時の予定です。

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