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序章十五話 機会

「美味しかったねー」

「確かにな」


 広めのテントと言えども四人が精一杯だ。

 毛布は四人のテントは二枚ずつ渡されているけど四人だと横で使うしかなさそうだな。二人で一枚だから見ているよりももっと近くないと飛び出てしまいそうだ。


「そういえば零のレベルがすごいことになっているね。五十を超えるってどういうことなの?」

「分からない、弱いからレベルが上がりやすいんだと思うけど。他の人はどれくらいなの」


 ソヨメがレベルを聞いて唾を飲んだ。

 だけどさ、俺の場合はレベルとステータスが比例しないんだよな。ガッカリさせてしまうけど先に話した方がいいよな。そんなことで嫌いになるとは思えやしないけど。まぁ、好きな人に隠し事をしたいとは思えない。


「ああ、ソヨメには悪いけど俺のステータスは未だに全て……Eだよ」


 E……ということは上がったってことか。

 俺も見えないだけで強くはなっているってことだよな。レベル五十三って確かに見た感じは強そうに見えるし。それに何気に銃術もEまで上がっている。ニーナとの親和性も高まっているってことだな。


「確かにEだと低く見えますね。でも、それとレベルの話は違うのでは?」

「いや……そうだけど……」


 言えない、少し嫌われるのが怖かったなんて。

 かなり年齢は重ねているけど恋愛に関しては割と経験が薄い。付き合ったり女の子とキスしたりとかはさすがにあるけど……どこが地雷なのかわからない女子とかばっかりだったしな。好きになる女子が大概、変な感じの人が多かった。


「別にレベルが早く上がるのなら転職すればいいだけですよ。今は弱い職業でも転職すれば強い職業になれると聞きました」

「へぇ……それなら早くレベルが上がるのはいいことかもね」

「そうですよ! 私のように何も無い人とは違いますよ!」


 何も無いねぇ……その時に叩いた胸を見て何も無いなんて俺は言えないや。あっ、やべ、普通にどこを見ていたのかバレバレだったみたいだ。近くだったから優奈と陽菜に腕の肉を抓られている。少しだけ痛い程度だな。これもステータスが上がったおかげか。


 対してソヨメは嬉しそうに胸を寄せて見せてくるし。かなり胸元がはだけている服なだけに俺に見てくれと言わんばかりの……ヤバい、これはヤバイな。ソヨメの見えない魔力に引き寄せられてしまう。ああ、ダメだ……柄にもなくソヨメを抱きしめようと……。


「……何でお前が入っているの」

「貧乳の何が悪い」


 なぜか間に入ってきたのが優奈ではなく陽菜なんだけど。なんだ、イチャついていたことが陽菜には嫌だったのか。仕方ないな、この貧乳で我慢してやろう。わざわざ入ってきたんだから抱きしめられる覚悟は出来ているのだろう。


「ちょ……女なら誰でもいい変態!? ジャパニーズ変態なの!?」

「ソヨメとのギューを邪魔した罰だ。甘んじて受け止めろよ」

「何で陽菜とイチャつくの!?」

「……その後に抱きしめてくれるのなら我慢しますとも、ええ……」


 ふざけるな、するに決まっているだろ。

 寝ながら、抱きしめながら寝てやる。何度もキスしたりして寝てやる。ふざけるな、こちとら思春期バリバリの男子高校生、略してDKだぞ。猿なみの性欲は持ち合わせているわ。その胸を後でいくらでも堪能……いえ、調子に乗りました。すいません……。


 優奈に刺されるかと思った、本気で……。

 だってさ、陽菜は可愛く顔を背けるばかりでソヨメも胸を寄せている。なのに優奈だけは明らかに俺の背後から離れないし変な殺気も飛ばしてきているからな。油断すれば死ぬ。……そうだ、こんな時こそニーナ……って、こっちもかよ……。


 今の音は……安全装置が作動したのか。

 私を撃たせませんって現れだよな。いや、撃つ気はサラサラなくて威圧として使えるかなって思ったんだが……こっちの機嫌も取らないといけないのかよ。面倒くさすぎる。別に欲望に忠実になってもいいだろ。今日は頑張ったんだしさ。


「……あの……一番にレベルが高いヒデで九ぐらいだよ。……その……離してほしひは……」


 噛んだ、陽菜が噛んだ……。

 初めて見る姿なんだが。だいたい自分の好きな腐向けの本を朗読するくらいだから陽菜の滑舌はかなりいい。それなのにここで噛むのか。なんという女の子らしさ。これは……可愛いな。なんだろう、友達のこんな姿を見ては行けなかった気がする。ちょっと罪悪感があるな。


「ごめんな……今度からは許可を取ってからにするよ」

「……うん、いつでもいいけど人前はちょっと」


 うわ、ダメだ……俺にはソヨメがいるんだ。

 陽菜も好きになりそうなくらいにこれは可愛い。多分だけど男のほとんどがこんな姿を見れば恋心を抱くと思う。また見たくなれば抱きしめてあげればいいんだな。覚えておいて本当に人のいない時にやろう。


「……つ、次は優奈に……」

「ごめん、先客がいるんだ」

「ありがとうございます」


 優奈に袖を掴まれたけど次はソヨメだ。

 刺されても知るものか。……いや、怖いんで後で抱きしめてあげるか。本気で寝ている最中に変なことをされたら困る。その点で言えばソヨメも寝ている最中に襲ってくる可能性があるのか。優奈とは違う意味で怖いな。そういうことは街に着いたらとかにしておきたい。


「寝る前にしてあげるから」

「……それなら仕方ないね。その代わり一分以上は抱きしめること! いいね!」

「あー、面倒だけどいいよ」


 少し眉が動いたけど面倒は面倒だろ。

 首を縦に振ったってことは了解してくれたってことで。まずはこの胸の膨らみを楽しまなければいけないな。リア充だけが体験出来ると言われているこの胸の……いや、それ以上の男のロマンの塊を。


「それでヒデのステータスってどれくらいなの」

「全部Dを超えていたよ」

「それはすごいですねー」


 声が本当にすごいって言ってなさそうだが。

 まぁ、ソヨメの言葉に嘘はないだろうな。実際は興味が無いから適当な返事が出たんだろうし。本当に俺のハグの方が重要そうだ。胸に顔を埋めてきたりとか色々なことをしてくる。少しむず痒いけど可愛いから許そう。


「どちらにせよ、零を頼りにすることには変わりないかな。数値で言えば零のニーナはCの上級なのにヒデのDは最下位に近いよ」

「……俺は未だに弱いけどな」

「速度とかで言うのなら優奈とどっこいどっこいだと思うけど。少なくとも物理面では私より零の方が強いし」


 レベルが早く上がっただけ……ではなかったってことなんだな。弱いなりにも俺は強くなっているんだ。強いからこそもっと上へ行くには時間がかかってしまう。勇者の秀を差に出すのではなく弱いところは凡人に近い優奈や陽菜を出す。陽菜らしいフォローの仕方だ。それにニーナがCの上級レベルの破壊力があるのか。


 もっと上手く使ってやろう。大切な俺の仲間なんだからな。俺の心を読んで助けてくれる唯一の俺の分身だ。明日の朝には磨いてやるのも悪くないな。今日は眠いからもう寝るつもりだけど。ああそうだ、忘れてはいけないよな。優奈を抱きしめてあげることも。


「零の育ち方は全部が一ずつ上がっているんだよね。私達とは明らかに育ち方が違う。私達は良ければ二とかだけど悪いとゼロなんだ。そうやって確実に一ずつ上がっている零がすごいと思う」

「……もしかしたら分かっていない固有スキルのせいかもな」

「え!? レイは固有スキルがあるのですか?」


 そこまで驚くことなのか……。

 俺達の場合は全員があるせいで珍しく見えないけど異世界だと珍しいのか。よく分からないな。俺の場合はあるかどうかも分からない固有スキルなんだ。自信を持ってあるとは言えないんだよな。とはいえ、ステータスには?としっかり書かれている。


「俺達のパーティは全員が持っているよ」

「す、すごいところに助けられたんですね。私達の村なら一人もいませんでしたよ……」


 話し方からして村の人の数は少なくないよな。

 ソヨメの反応からして持っているのなら話題に上がりそうなものだし、本当にソヨメの場合は誰も持っていなかったって思っているんだろう。もしかしたら一人くらいはいたかもしれないしな。待てよ……レベルと同じくステータスも上がっているのなら今の数値は五十一か?


「俺の数値ってどれくらい?」

「六十二だよ」


 逆算して……最初の数値は十か。

 そこから一ずつだとして最高レベルは多分だけど九十九だろうな。百越えなら転職をする人の話なんて出るわけがないだろう。つまり過去にいるってことはそこまで高くはないってことだ。常識的に考えればそこら辺が有り得るかな。


「……どちらにせよ、ヒデの足元には敵いやしないってことだよな」

「ヒデにはね、それでも大和が相手なら五分五分で戦えるんじゃないかな。零の頭の回転の速さなら倒し方もすぐに思いつきそうだし」


 否定は出来ないな、大和は愚直なところがある。

 ただゴブリン達を潰す時に見せた奪取の使い方だと俺が簡単にやられそうな気がする。アイツの使い方は相手の酸素を奪って自分の吸う酸素の量を増やしていた。多くを奪えば高濃度な酸素によって自滅するが、ただでさえ広い俺と大和のステータスの差以上の枷を背負うことになってしまうからな。


 いや、火魔法を覚えれば可能性はあるか。

 アイツは確か物理面では強かったけど魔法面ではそこまで強くはなかったはず。秀のように弱点のない存在とは違う。きっとどこかに弱点はあるはずだ。もっと根本的な何かがあるとしか思えないよな。大和も強いとはいえ人だ……それならいくらでも手が。


「すごく考えているみたいだけど大和は味方なんだから戦うことはないよ」

「……そうだよな、仲間割れしなければチート野郎とは戦わなくて済むもんな」


 前提を間違えていたな。

 大和は俺の大切な幼馴染で友人であり、そして今では仲間だ。友人や親友という有り触れた存在から戦友という珍しい間柄に変化したんだ。俺は手助けをして、手助けをされての繰り返しをしなければいけないんだ。何で敵に回そうと考えてしまったんだよ。


「ごめんな、寝る時にまたするから」


 そう言ってソヨメから離れてあげる。

 優奈を抱きしめてあげる。さっきまであったものがなくなって少しだけ悲しい。顔に出ていたのか頬を抓られたけど思ったものは仕方がないだろうに。それに胸の大きさで好き嫌いがあるわけじゃないって言うのは陽菜で分かった……ああ、俺しか分かっていないのか。


 きっちり頭の中で一分間だけ抱きしめた。

 その代わりに何も言わずに静かに顔を見つめたりしながら抱きしめたから、優奈から文句は言われなかった。嬉しさとかそういうのよりは恥ずかしさが強かったんだと思う。静かに離されてすぐに毛布の中に雑魚寝したし。それでも隣を取るのは早いな。陽菜を端に追いやってまで俺の心を抉りに来たか。


 まぁ、優奈を抱きしめたりなんかせずにソヨメを抱きしめながら眠りにつくわけですが。この匂いも何もかもが俺の落ち着かせてくれてソヨメ依存性になりそうな気がするな。……何でここまで思えるのかは分からないけど。


「ソヨメ」

「何ですか?」

「おやすみ」

「また明日」


 ソヨメを撫でてから瞳を閉じる。家のような眠気が襲ってきて心地がいい。起きるのは……大和に起こしてもらえばいいよな。ゆっくり寝て明日の英気を養おう。この胸の中なら俺もゆっくり休めるはずだしな。

巨乳っていいですよね。あの柔らかさ……ちなみに作者は貧乳穏健派です。異論は認めます。


次回は十日に出します。

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