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序章十四話 多分

「こんな編成だったんですね」

「そうだね、近距離は三人しかいないから」


 ソヨメの目からは見るもの見るもの新鮮なようで小さなことでも聞かれていた。そんな中で本当に不思議そうに俺達のパーティ編成を見ていた。前衛が三人で後衛が二人は普通の編成だと思うんだけどな。


「レイさんは前衛じゃないんですね」

「ああ、そこか。俺はこの中で一番に弱いんだ。だから、リーダーを任されているってのもあるけどね」


 それはそうだと思う。前衛に立つ人が攻撃を受けて後衛に立つ人が状況をしっかりと判断する。ニーナで撃ちながら他の皆を見るサポートタイプの俺にはちょうどいいと言えばちょうどいい。だけど、それは俺じゃなくて秀でもやろうと思えばやれるだろうな。アイツは後衛に回ろうと思えば回れるだろうし、何よりも一番に難しいであろう中衛に近い前衛を担っている。俺の代わりに陽菜がなるのもアリだけど……まぁ、戦闘面での陽菜の指示は期待出来ないだろうな。


「そう言っているけど瞬間的な攻撃力は零が一番なんだよ」

「へー、さすがは英雄です!」

「……そのうち追い越されるけどな」


 今のところは確かに一撃で言えば俺に叶う人がいないのは事実だ。それは否定しない。だけど、秀なら簡単に俺の攻撃を超えるだろう。レベルはかなり上がっているけどステータスは上がっていないしな。もしも俺が皆と肩を並べようとするのならニーナの進化は必須だ。後は俺個人の強化くらいだな。


 唯一、俺が期待出来るのは未だに見ることが出来ない不明な固有スキル。それがものによっては誰よりも強いスキルの可能性もあるからな。これのおかげでって言えるくらいに強い固有スキルであって欲しい。そして皆と一緒にいられるように早く発現して欲しい。


「それでもリーダーに見合うだけの強さは持っているさ。卑屈になるなよ、お前が勝ったおかげで全員の命が救われたんだ」

「そうですよ、私の英雄であることには」

「変わらないってか」


 ソヨメの言いたそうなことを言ってやるとすごく嬉しそうな顔をされた。それはまだいい。だからといって手を絡めてくるのはどうかと思うんだけどな。どれだけあるんだろう。少なくとも日本で見かけられるほどの大きさではないような……。


「イチャつくな!」

「何でだよ!?」


 頬を真っ赤にした優奈にビンタされた。

 ビンタ……何で俺……。俺からソヨメに腕を絡まさせたわけではないのに。俺からなら甘んじて受けてやるが少なくとも今回はソヨメが俺に腕を絡ませてきたんだ。ぶっちゃけ……嫌ではないから話す気もないけどな。


「優奈も」

「右手を塞がれたら撃てないだろ」

「ううー!」


 本気の地団駄って初めて見たわ。

 そこまで俺に引っ付きたい理由がわからないんだけどな。もし恋心を抱かれているとすれば特に理由があったとは思えない。多分、イタズラ心でやりたいんだと思う。ソヨメは俺が命を助けたから好かれているって考えたら分かるしな。それに俺はソヨメを拒否しないし。


 ソヨメが嫌かどうかって聞かれたら、普通に好きだしな。子供が出来る出来ないは俺の好き嫌いに関わる話じゃないし、何よりゴブリンに犯されたかどうかもソヨメの価値が下がる理由にはならない。金髪で巨乳で美人と言うよりは少しツリ目の可愛いソヨメ……日本人の男のロマンの塊のような気がする。というか、俺自身が子供を絶対に欲しいって人ではないしなぁ。そこら辺も関係してくるのかもしれない。


「……って、お前も何か言いたいのかよ」


 怒りに近いようなリロード音が聞こえた。

 確実に分かる、ニーナが怒っているんだ。怒っている理由は分からないけど何となく俺専用の武器なだけに分かるんだよなぁ。……俺専用って考えたらニーナがまたリロードしたんだが。これは喜んでいるってことか。……俺専用のニーナなんだから拗ねたりしないでくれよ。俺の命はお前にかかっているんだからな。


「……何で何回もリロードしているの?」

「ニーナが拗ねたり喜んだりしている。本当に可愛い奴だよ。人だったら優奈やソヨメ並に綺麗な人だったんだろうな」


 いや、ニーナを褒めたはずなのに何で二人が喜んでいるんだよ。ってか、ニーナも喜んでいるし。綺麗って言葉に全員が反応しているのか。適当に言ったのに反応するってことはニーナは女の心を持っていそうだ。そこに関してはどちらでもいいが。


 ちょっと怒ったっぽいけど変な意味じゃないぞ。ニーナはニーナなんだから男だろうと構わずに使い続けているってことだ。ニーナだから使おうって思えているんだよ。女でも男でも俺はニーナのことが好きだからな。


「おーい、三人でイチャつくなよ」

「ヒデも女を守りながらの癖によく言えるな」

「……大和よりはマシじゃね?」


 うーんと……それは何も言わないでおこう。

 ソヨメと秀を好きになっている女の子、それ以外の三人は大和にそういう目を送っているし。最前衛で敵を狩る姿がカッコよく写ったのか。ただ後で教えておかないとな。アイツ……そういう色恋沙汰に興味が無いって。そのまま恋していればずっと独り身になりそうだ。


「いや、大和もお前も大概だったわ」

「それは聞き捨てならないな。俺にはソヨメとニーナしかいないぞ」

「……お前、将来は刺されるな」


 否定はしない、現に刺されそうだ。

 なぜか殺意増し増しな優奈がいるしめちゃくちゃに喜んでいるソヨメとニーナがいる。いや、もう誰かにバレた以上、秀をからかうために隠しはしないからな。ソヨメのことは好きだ、以上。


「……お前のテントだけ四人にしておくわ」

「四人……? 秀と大和とソヨメか?」

「チッ……」


 いや、舌打ちされる筋合いはないが。

 これが普通だと思うよ。ソヨメと俺が同じなのは普通に理解出来る。まぁ、一緒に寝たがる優奈が一緒なのもまだいい。もう一人が分からないが。誰だ……少なくとも陽菜や他の女の子達は無いよな。秀は守ってあげている女の子だろう。ああ、そういうことか。


「大和とソヨメと優奈か!」

「……まぁ、それでいいわ。寝る時に分かるだろうよ」


 ということはハズレってことだよな。

 分からん、代わりに秀か……? 陽菜の可能性はあるけど、どちらかと言うと秀の可能性の方が高いしなぁ。まぁ、嫌がらないのなら陽菜でも大和でも秀でも誰でもいいや。変な話、仲間が相手なら誰とでも寝れるな。語弊がありそうな言い方だが間違ってないから訂正はしない。


 ニーナを撃ち込む。ゴブリンリーダーの頭が飛んで死んでしまった。寝る前にステータスでも確認しておこう。レベルがどこまで上がっているのか気になるしな。今なら全員が強いから寝る時間も増えそうだ。全回復とまではいっていないから早く寝て休みたい。


「……ここら辺にしようか」


 ソヨメの案内もあって川辺から離れた森の中を進んでいた。確かに少しだけ開けた場所でテントを張るにはちょうどいいだろう。秀が腰を下ろしたので俺達も腰を下ろす。


「これがお前らのテントな。大和はそっちの三人を守ってやってくれ」

「俺は?」

「優奈と陽菜、そしてその子だ」


 ああ、その組み合わせだったのね。

 特に嫌がりもせずにテントを立てる当たり陽菜はそれで納得していたんだろう。そしてちゃっかりと好きな子と二人っきりの環境を作る当たり隅に置けない。大和を三人と寝かせたのも三人のためか。まぁ、アイツならそういうことを気にしないだろうしな。初恋が中学の時の担任だったくらいだし。


 テントは少しだけ広めだ。大和の方も似たような感じだな。そして秀のところは当然のように小さめ。これ以上の数が出ないってことは見つかったのは運が良いサイズって言うには、都合の良すぎる三つを手に入れたってことか。さすがは幸運な優奈だ。


「今日は最初は俺が見張る。次は大和、最後が零ってところでいいか?」

「俺が間の方が楽だろうな。零は一度でも寝れば纏まった時間を寝たがるだろうし」

「……まぁ、それでいいや」


 女子二人を中に入れないのはそういうことだ。

 男子が見張りをするってことで決定ね。ここで覆そうとすればカッコ悪いだけだし、やめておこうか。男の子としてのプライドくらいは弱くてもあるしな。


「それじゃあ、立て次第、夕食の準備にしよう。今日は魚があるし楽しみだな」


 屈託のない笑顔を浮かべて親指を立てる。

 柄にはなくても俺もそうして返してやった。大和も分からないなりにやってくれる。十数分が経って全てが終える。用意周到な陽菜のおかげで木々を集める必要もなかった。魚の腸を取り出す女性陣と木を突き刺す俺達、そして俺達が憎むべきゴブリンナイトの肉を刺していく。どんな顔をしていたのかは分からない。ただコイツはもう負けた敗北者の食材だ。


「やるってことはやられてもいいってことだ」


 小さく呟いて火の近くの地面に差し込む。

 全員で円を描くように座って飯を口に運んだ。その中でも食事をしていなかったのか、五人の食欲はすさまじいものだった。特にゴブリンナイトを泣きながら食べているのを見ると恨みを食欲に変えているのかもしれない。もう二度と届かない恨みの拳だしな。


「……えへへ、恥ずかしいですね」

「食べてもらった方が倒した甲斐が出てくる。気にせずに食べて欲しいな」


 そう言うとソヨメは小さく頷きながら食べた。

 一粒だけ涙が流れたことは見なかったことにしよう。女心が分からないとは言ってもそこまで馬鹿ではない。優しさの分からない馬鹿ではない、ただの分かろうとしても分からないだけだ。秀ほどの女心を理解している奴と比べるのも悪いんだろうけどな。軽く頭だけは撫でてやった。


 これからはこんなことが起こらないように幸せにしよう。俺の近くを心地よいと思ってくれる間は俺がソヨメの居場所だ。そう思うときっと明日は今日とは反対の良い日になるって気がするな。そんな気がするよ。肯定するようなこの天気が証拠だ。満月が欠けずに月夜を照らしてくれているのだから。不思議と今夜の食事は美味しく思えた。

こんな青春を送りたかった……(しみじみ)。


次回は八日に投稿します。

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