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「ははは!」
鬼麿が笑う。
「なかなかやるね!!」
再び鬼麿が無法丸へと襲いかかる。
防戦の流れの中、無法丸は鬼麿の隙を見つけた。
息を吸う。
「ふんっ!!」
練気を込めた刃が鬼麿の右脇腹に飛ぶ。
「かっ!!」
鬼麿が右手の爪で、それを受けようとした瞬間。
無法丸の刀が翻った。
爪をすり抜け、鬼麿の右肘に斬りつける。
「ぎゃーーーっ!!」
鬼麿の悲鳴と同時に、右前腕部が斬り落とされる。
「うががが…」
左手を右腕の切断面に当て、鬼麿が下を向く。
「む!?」
無法丸が驚いた。
鬼麿の腕の傷から、一滴の血も流れ出していなかったからだ。
「うがが…が…は…は…ははは!!」
うめいていた鬼麿が突如、顔を上げ大笑した。
「全然、痛くないよ! ああ、可笑しい!」
無法丸は黙っている。
「右腕に隙があると思った? そりゃそうさ、わざと斬らせたんだから!」
鬼麿が足元の右前腕部を左手で拾い上げる。
無法丸に右腕を見せつけた。
「これをどうすると思う?」
鬼麿の持つ右手が、いきなり手を開き、爪をむき出す。
「こうするのさ!!」
鬼麿が右手を無法丸に投げつけた。
無法丸の刀が爪を弾き返す。
が。
弾かれた右腕が地に落ちず、そのまま空中を飛び、再び猛然と無法丸に襲いかかった。