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無法丸が思った、そのとき。
陽炎が忍びの跳躍力で後方へと、とんぼを切った。
陽炎は、ほんの一瞬で状況を判断したのだ。
自らの存在が無法丸を不利にせぬように、我が身をこの場から離したのだった。
陽炎が森の木々の中へと走りだす。
「逃がすか!!」
化彦と牙狼が陽炎の後を追う。
「くっ!!」
無法丸も前に出ようとするが。
「駄目だよ」
鬼麿が立ち塞がった。
「お前は僕と遊ぶんだ」
無法丸は、ため息をついた。
鞘から刀を抜き放ち、深く息を吸う。
そして、息を吐きざまに、右手で剣の一撃を鬼麿の顔に打ち込んだ。
激しい金属音と共に、その攻撃が弾き返される。
鬼麿の両手の爪が、無法丸の刀を迎え撃ったのだ。
(練気を込めた一撃をこうも簡単に受けるとは!)
無法丸は舌を巻いた。
「今度は僕の番!!」
鬼麿の両手の爪が矢継ぎ早に繰り出される。
無法丸の舞踊のような動きが、ときには刀で受け、ときには身をかわし、それらを防ぎきった。