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武龍伝  作者: もんじろう
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 得体の知れない虚しさに押し潰されそうになるときが。


 そんなときは任務に没頭し、心を殺した。


 何も考えなければ楽になった。


 自分は道具だと思えば、苦しみは和らいだ。


「何を言ってるのか分からないかもしれないな」


 無法丸が苦笑した。


(いや、分かる)


 陽炎は心の中で、そう返事していた。


「こんなことは、あまり人には話さないんだが」


 無法丸が陽炎の眼を正面から見つめた。


「お前の眼が日向(ひなた)…ああ、さっきの話の女に似てるから、つい…」


 そこまで言って、無法丸は眼を反らした。


 突然。


 二人は、がばっと立ち上がった。


 無法丸は刀を左手に、陽炎は小刀を右手で逆手に構える。


 二人の視線は共に、同じ方向の闇を見ていた。


「ははは」


 鈴の音のような、かわいらしい声が聞こえた。


 闇の中から三つの影が現れる。


 牙狼、化彦、鬼麿であった。


「見つけたよ」


 鬼麿が舌舐めずりした。


「もう、お前たちは終わりさ」


 鬼麿は無法丸と陽炎を交互に値踏みするかの如く見比べた。


「どっちにするかな?」


 しばしの思案の後。


「強そうな方にするよ」


 無法丸を指す。


「長く楽しめるから!!」


 鬼麿が持っていた薄布を投げ、続いて着物も脱ぎ捨てた。


 無法丸たちが一瞬、戸惑う。


「ああ」


 鬼麿が笑った。


「帰るときに着る物が要るからね」

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