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空怪がぼさぼさ頭の忍び、飛刃に指図した。
突然の曲者たちの出現に度肝を抜かれていた侍たちが、ようやく気を取り直した。
「であえ! であえ! 曲者じゃ!」
口々に大声を上げると腰の刀を抜き、曲者の先頭である飛刃へと斬りかかった。
「早うせぬか、飛刃!!」
空怪が叫ぶ。
「慌てるな、空怪」
飛刃が笑った。
「もう投げておる」
飛刃がそう言うのと、突如、四人の侍たちの側面から飛来した何かが、彼らの首筋を次々と切断するのが同時であった。
四人の護衛は全員倒れ、動かなくなった。
侍たちの命を奪った武器、くの字型の脇差しほどの大きさの刃物が空中を旋回し、飛刃の右手の人差し指と中指の間で受け止められた。
「くくく」
飛刃が笑った。
「この刃は俺が狙った場所へ寸分違わず飛んでいく」
よく見れば、飛刃の腰には同じ形の刃が、他にも何本も束ねて吊ら下げられている。
「竜丸を捕らえよ」
空怪が命じると、飛刃以外の忍びたちが刀を手に竜丸へと近づいた。
すると侍たちの死に、揃って怯えていたかに見えた四人の侍女たちの一人が、さっと前へと飛びだした。
侍女は懐刀を取り出すと、竜丸に迫った忍びの先頭をあっという間に斬り捨てた。
思わぬ不意討ちを受けた残りの忍びたちの動きが止まる。
侍女は自らの背後に蜜柑と竜丸を庇った。