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その身体から何かが飛び出し、地を這った。
「お!?」
隼人が蛇美羅を見ると、そこには前回と同じく、蛇の皮が落ちている。
地を這った何かが、草むらへと飛び込んだ。
「刀小僧!! 次に逢うときが、お前の最後だよ!!」
草むらから蛇美羅の声が聞こえ、すぐに気配が消えた。
「次か…」
さすがに隼人の表情も険しくなる。
それも束の間。
隼人は走りだした。
白帯たちに追われている蜜柑と春馬を助けねばならない。
武龍の指示を受け、魔祓い師の元へと向かう陽炎と無法丸は、山肌に穿たれた、すぐに行き止まりとなる洞穴の中に居た。
すでに日は暮れており、ここで一晩を過ごすためである。
焚き火の灯りが二人の顔を照らし、後ろの岩肌に濃い影を映した。
無法丸が懐から取り出した袋から、干し肉を陽炎に差し出す。
「今日のところは、これで我慢してくれ。明日は魚でも釣ってみるかな」
そう言った無法丸の表情は柔らかい。
陽炎は干し肉を受け取った。