83/204
83
「ああ」
白帯が頷く。
「殺れ!!」
白帯の声と同時に、忍びたちが蜜柑と春馬に接近する。
隼人が二人を守ろうとするが、蛇美羅が間に入り、邪魔をした。
(こいつ…)
隼人は感じ取った。
明らかに変わっていた。
刀を構え眼前に立つ蛇美羅の剣気が前回とは桁違いに増している。
油断ならざる敵であった。
「春馬!」
隼人が呼んだ。
「隼人!」
「蜜柑を連れて逃げろ! 俺も、こいつを片づけたらすぐに行く!」
「分かった!」
春馬が蜜柑の手を取る。
「行こう!」
蜜柑は魂を繋ごうと念じてみたが、何も起こらなかった。
蜜柑の降霊は場所、人、さまざまな条件が揃わねば、成り立たない。
魂を呼べない蜜柑は、ただの城育ちの姫である。
「隼人、武運を!」
蜜柑はそう言って、春馬と走りだした。
「あたしを片づけたら、すぐに行くだって?」
蛇美羅が、くくくっと笑う。
「そいつは望み薄だねぇ」
蛇美羅が中段に構えた。
隼人も腰を落とし、二刀に手をかける。