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やや開けた場所で、一人の老人が焚き火にあたっている。
総白髪で七十は越えているか。
武士の風体をして、腰には刀と脇差しを携えていた。
「おや?」
小柄な背中を丸めた老人が、静香たちに顔を向けた。
「こんなところで若い娘さんたちに遭うとは、どういう風の吹き回しかな?」
老人が、にこりと笑った。
静香の鋭い眼光が老人を刺すように見つめる。
「おお、何という物騒な眼をしておる。剣呑、剣呑」
老人は首をすくめ、自らの刀と脇差しを鞘に入ったまま、静香の足元へと山なりに放った。
「二本とも、なまくらじゃ。それで安心じゃろ」
静香が刀を拾い、刃を確かめた。
老人の言う通りだった。
「こっちに来て、火にあたると良い。魚も焼けておるし、汁も丁度良い加減」
老人が二人を手招いた。
確かに、先ほどから良い匂いが辺りに漂っている。
桜はもちろん空腹を感じていたが、一応、静香の顔を見た。
静香が頷く。
桜が笑顔で老人の右隣に座った。