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「やり過ぎです、夜叉姫様。あの者は姫様を思って」
「何じゃ! 何じゃ、何じゃ! 竜丸はどうして、わらわ以外の女に優しいのじゃ!」
夜叉姫が竜丸の胸を叩き始める。
さして、強い力ではない。
竜丸は困り果てた。
夜叉姫と居ると、気づけば散々に振り回されている。
夜叉姫が竜丸の手を取り、元の場所へと引っ張った。
「邪魔が入ったから、やり直しじゃ!」
夜叉姫が竜丸の前に座る。
「着物を脱げ、竜丸! 裸になれ!」
「ええ!?」
難色を示す竜丸に、夜叉姫の眼が吊り上がる。
「わらわの言う通りにせねば、地下牢の二人はどうなると思う?」
竜丸は、どきりとした。
「父上の大業のため、殺しはせぬが少々、痛めつけるだけなら…」
夜叉姫が竜丸の顔を下から食い入るように、にらみつける。
その双眸には激しい怒りと、本当に言葉を実行しかねない迫力があった。
(何てことだ…)
気づけば竜丸は夜叉姫の前で、生まれたままの姿になっていた。