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男の体格、筋肉量、木刀の重さ、それらから推察できる打撃の威力を大きく上回る衝撃が針蔵を襲った。
両手から生えた針は全て折れ飛び、さらに針蔵の腕の骨が粉砕される。
針蔵は男の前で両ひざを着き、苦痛にうめいた。
「お」
男が言った。
「駄目だな。やっぱり壊れたか」
陽炎は男が持つ木刀が、真ん中ほどで折れていると気づいた。
「俺に合う刀が、いまだに見つからないのが困る」
男が、ため息をついた。
折れた木刀を捨てる。
「針蔵!!」
化彦が狼狽えた。
思わぬ強敵の出現に、顔が青ざめている。
針蔵が歯を食い縛り、立ち上がった。
両手はだらりと下がり使えないが、その両眼から闘志は消えていない。
頭を男に向けた。
顔を含めた頭全体から、針が飛び出す。
「があーーーっ!!」
雄叫びを上げ、針蔵が突進する。
「おっと」
男はそれをかわすと、力強い跳躍で陽炎のそばへと下りた。
右手で陽炎の腰を掴み、さっと引き寄せる。




