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「鳳の侍と鳳衆、それによく分からない奴らが多い」
「こちらもです」と燐。
「堀から中へ忍び込めぬか?」
陽炎が訊いた。
「そうだね、その筋を探るか」
焔が頷き、雑木林から身を低くして出ようとした、そのとき。
陽炎の眼の端が、あり得ざる動きをとらえた。
すなわち、燐が小刀を抜き、焔の背中を刺したのである。
「うっ」
焔がうめき、倒れた。
陽炎は混乱しつつも懐中から小刀を出し、逆手に構えた。
焔を庇う位置へ移る。
「燐!?」
陽炎が呼んだ。
燐は、にやにやと笑っている。
「そうか、この女は燐という名か」
燐が言った。
陽炎は、はっとなった。
眼の前に居るのは、燐の姿はしているが燐ではない。
「ききき」
燐が笑った。
「変装にも、ほどがあるよな? そりゃそうさ、俺は狂虎様の魔力を授かって誰にでも変化できるのだから」
燐が言い終わると、その身体に急激な変容が起こった。