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幻斎が忍びから手を離し、左手で小刀を構えた。
両手を駆使して、残った敵を次々と屠る。
最後の一人は蜜柑たちに背を向け逃走しようとしたが、駆けつけた隼人と鉢合わせ、一刀のもとに斬り倒された。
動く敵は居なくなった。
「何とかなったな」
隼人が、にかっと笑った。
「けっこう、危なかった」
春馬が自分の身体を抱きしめる。
「お」
隼人が何かに気づく。
蛇美羅が倒れていた場所まで戻った。
そこに死体は無い。
何かが落ちている。
隼人がそれを拾い上げた。
「何だ、これ?」
「ちょっと見せて」
春馬が隼人から、そのぺらぺらとした細長い物を受け取る。
春馬は、しばらくそれを観察していたが「これは蛇の皮だよ。脱皮してる。人の形はしてるけど」
隼人の脳裏に、蛇美羅の言葉が甦った。
「次は…負けないよ…」
隼人が眉間に、しわを寄せる。
「ほう」
幻斎が言った。
「その物から、何やら懐かしい気配がする」
幻斎が蛇の皮を見つめている。