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春馬は瞳を輝かせ、蜜柑と虎然を交互に観察している。
「ありがとう、法師どの。助かりました」
蜜柑の言葉に虎然は頷いた。
「かかかっ! わしも良い刀供養が出来た」
「それでは」
「おう、さらばじゃ」
こうして虎然の魂は解放された。
その後、蜜柑が感じる竜丸の気配を目指して、三人で山道を進んで来たのだ。
「蜜柑さんに、このシェルの威力をいつか見せてあげるね」
春馬が、にこりとして言った。
楽しそうだ。
「春馬」
隼人の顔が引きしまり、突然、立ち上がった。
「どうやら、すぐに披露できそうだぜ」
「ええ!?」
春馬が驚く。
周りの木々の間から、音もなく忍び装束の男たちが現れた。
全部で十人。
小諸城で蜜柑たちを襲った忍びたちと同じ格好である。
その男たちの中央、丁度、隼人の正面から、真っ赤な着流しの女が進み出た。
すらりとして首が長い。
否、長すぎる。
本来なら頭があるべき位置よりも、もう一個分は上に、つり上がった瞳が光る細面の顔が乗っている。
両眼の下方で開かれた口は、大きく耳の辺りまで裂けていた。
黒髪を団子にまとめ、玉かんざしを三本挿している。
着物の外に露出している肌は全て、爬虫類の如きウロコで覆われていた。
女の大口から、鋭い二本の牙と真っ赤な口中が覗く。