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春馬と蜜柑が隼人を見る。
「その球は限りがあるだろ。無駄に使うな」
「そか。う、うん」
春馬は頷いたが、少々、残念そうであった。
武者修行の隼人、見聞を広めるための春馬、二人が偶然に出逢ったのは二年前、そこからはずっといっしょに旅をしている。
あっという間に意気投合し、今ではすっかり阿吽の呼吸だった。
蜜柑の窮地を救った後、竜丸誘拐の事情を聞くやいなや、二人はすぐさま協力を申し出た。
両者とも悪を許せぬ気質である。
蜜柑は嬉しかった。
いかな「幽霊姫」といえども、たった一人で全容の分からぬ敵と戦うのは、やはり不安であったからだ。
しかも、あれほど城では気味悪がられていた蜜柑の霊能力を二人は何の抵抗も無く、すんなりと受け入れた。
空怪に逃げられた後、虎然の魂を元に戻す様子を隼人と春馬は興味深そうに眺めていた。
「この幽霊、めちゃくちゃごついな」と隼人。
「霊体をどうやって繋ぎ止めているのか…気になりますね」