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竜丸が拐われてから、初めての笑顔であった。
そして、その笑顔は蜜柑が城では竜丸にしか見せないものであるとは、二人の少年たちは知るよしもない。
蜜柑が笑っているのを都合良くも賞賛ととらえた春馬は、さらに熱弁をふるい始める。
「こうやって」
春馬が白い球を焚き火の炎に近づけた。
球の横に付いている小さな出っ張りを押す。
かちりと音がした。
焚き火の炎が、ごく微量、白い球に空いた小さな穴に吸い込まれるのを蜜柑は見た。
「これで、このシェルは炎の属性を得た。次はこれを」
春馬が先ほど押した出っ張りを蜜柑に向ける。
出っ張りの周りには円状の目盛りと、見たこともない記号が書いてある。
「回して威力を選ぶ。ほんの少しから何十倍まで調節できるんだよ」
「ごめん、よく分からない」
蜜柑が半笑いで言った。
まだ、さっきの可笑しさが残っているのだ。
「じゃあ、実際に使ってみようか?」
「春馬!」
隼人が割って入った。
「あ。隼人、起きたの?」