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耳が潰れそうなほどの怒号であった。
笑っていた隼人が、はっとなった。
確かに祖父の言葉は正しい。
戦場であれば、すでに自分は死んでいる。
「お前は我流にて、わしと立ち合った。すでにこの道場の者ではない。お前と我が家の縁は切れた。二度と敷居を跨ぐことは許さぬ! どこへなりと去れ!!」
隼人が、ぐっと口を真一文字に結んだ。
そして、美剣と静まり返った門弟たちに一礼すると、壁穴から外へと出て、二度と戻らなかった。
美剣隼人は目覚めた。
眼の前には焚き火が燃えている。
どうやら、うとうとしていたようだ。
山道沿いの森の中での野宿である。
辺りは夜の闇に覆われている。
蜜柑と知り合い、竜丸の救出に力を貸すと決まってから、三日目の夜であった。
「僕の師匠は『未来』って国から来たんだよ」
斜め前方から、春馬の声がする。
「『未来』? 初めて聞く国だね」
蜜柑の声。
隼人が視線を上げると、二人が焚き火のそばで話している。