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命を賭けた真剣勝負が始まった。
齢六十半ばだが、筋骨隆隆の大柄な美剣と比べ、あまりに隼人は小さい。
日々の修練で鍛えられているとはいえ、真の猛獣の前に立てば、さしずめ隼人は猫のようなものであった。
しかし、隼人は怯まない。
勝負であれば異常に冷徹な祖父も、よもや孫を殺しはせぬと、たかをくくっているのか?
否。
隼人は自らの命を賭ける覚悟で祖父の前に立っている。
(ここは戦場。負ければ死あるのみ!!)
不退転の決意であった。
「来い、隼人っ!!」
美剣の大音声。
隼人、迷わず前に出る。
両肩に担いだ木刀を左右から一気に、美剣に斬りつけた。
隼人の双眸に光る必殺の剣気に、美剣のそれが瞬間、反応した。
「ふんっ!!」
気合いと共に放たれた美剣の木刀は、隼人の二刀より数倍の速さで飛ぶ。
隼人の右こめかみの辺りを直撃した。
斬撃の威力に身体が半回転し、天地逆となった隼人は吹き飛ばされ、道場の板壁にぶつかった。