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「もとより、そのつもりだ。そうか。将軍家と戦うか。それならば私も少しは楽しめるというものだな」
静香が「ふふふ」と口元をゆるめた。
美剣隼人、十一歳のとき。
祖父である「大剣豪」美剣と木刀を用いた稽古と相成った。
双方、防具はつけぬ軽装ではあったが、両手に一本ずつ木刀を構えた隼人を見て、美剣の怒号が飛んだ。
「隼人っ!!」
美剣道場の門弟たちが、その地獄の底から響くような声に心胆寒からしめられる中、隼人だけが真剣な面持ちで祖父を見つめていた。
「何故、美剣流を使わぬ! 殺されたいか!!」
「俺は」
隼人が言った。
その双眸は、ぎらぎらと燃え盛っている。
「俺流を極める」
「この、しれ者めがっ!!」
美剣が木刀を居合いの形に構えた。
「こうなったからには他流との試合…いや、死合と見なす!!」
門弟たちの顔色が皆、青ざめた。
が、一度、美剣が宣言したからには、もう誰もくつがえすことは出来ない。