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桜は静香と視線を合わそうとせず、恥ずかしそうだ。
が、やはり、身体の正面は静香に向けたままであった。
静香の眼が細まる。
この娘は何かを隠している。
そう感じていた。
「これから、どうする?」
内心は口にせず、静香が訊いた。
桜の顔が引きしまり、静香を見つめる。
「鬼道城に二人の『門鐘の巫女』たちが囚われているようです」
静香が頷く。
「ああ。将軍家が暗躍しているらしい」
「将軍家!?」
桜が思わず右手で自らの口を押さえた。
では、将軍家は三人の「門鐘の巫女」を集め、異界の軍勢を呼ぼうとしているのか?
幼き頃より何度も教えられた初代将軍「鳳武尊」の伝承が、桜の頭をよぎった。
「お前はどうしたい? 逃げるか?」
「いえ」
桜が首を横に振った。
「私は鬼道城へ行き、二人を助けたいと思います」
「ほう」
静香の瞳が、その色を強めた。
「攻めると言うのか?」
桜が頷く。
「はい。静香様、どうか私に力を貸してください」