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静香は、はね飛ばした白帯の首に眼を向けた。
ない。
白帯の巻いていた包帯があるのみで、首がない。
静香が首なしの身体の方へと視線を移す。
今度は着物と刀と包帯だけが残っている。
白帯の死体が忽然と消えている。
「ふ」
静香が鼻で笑った。
周りを見回すと五人の忍びの姿も無い。
どうやら逃げたようだ。
静香は刀を鞘に納めた。
座り込み、かわいらしい瞳を大きく見開いて戦いの顛末を見守っていた桜の前に立つ。
「お前が『門鐘の巫女』桜だな」
問うたのではない。
断定である。
「紫雲様ですか!?」
桜が言った。
静香を神官の長が言った剣豪「紫雲」だと思ったのだ。
「紫雲?」
静香が首を傾げた。
「え? す、すみません、人違いですね」
桜が顔を赤らめる。
「助けていただき、ありがとうございます」
静香の口の右側が、少しだけ上がった。
「私はお前を助けるために来た」
「ええ!?」
桜が驚く。
「それはいったい?」
「まずは」
静香は桜の問いを無視した。