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静香は左腰の刀の柄に右手を置いて上半身を左へと、ひねった。
静香からは白帯の姿が見えない形になる。
「むう」
白帯が唸った。
静香の構えは一見、無防備だ。
しかし、こちらに背を向けた静香の殺気は、どろどろと渦巻き、白帯の身体にまとわりついてくる。
これは隙などではない。
罠だ。
死の罠なのだ。
白帯は微かに震えた。
狂虎様より魔力を賜った自分が怯えるなど、あってはならぬこと。
そう思った。
「死ねーーーっ!!」
恐れを振り払うかのように雄叫びを上げた白帯が、静香へと斬りかかった。
刹那。
静香の双眸が、かっと開き、強烈な青い光を放つ。
静香のひねられた上半身が元に戻りながら、腰の刀を鞘走らせる。
すさまじい速さであった。
白帯の刀が静香に届くよりも先に、その包帯を巻いた首が、はねられた。
刀を落とし、白帯が倒れる。
「?」
静香の顔が、やや曇った。
妙な手応えであった。
自分の持つ刀の刃を見る。
血ではなく茶色い汁が付いている。