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「狂虎様に魔力を賜ったからか?」
「我ら兄弟にも授けて欲しかった」
「お、この女、なかなか色っぽいぞ!」
「確かに! 狂虎様にお渡しする前に、俺たちで味見してみてはどうか?」
一人の提案に四人は「良い考えだ」と色めきたった。
そこから「女をよこせ」の大合唱が始まった。
桜は青ざめた。
この忍びたちは自分を捜していたのだ。
隠れ里を襲ったのも、この者たちに違いない。
(では、里の皆はもう…)
桜は、がっくりとうなだれた。
しかも、剣豪「紫雲」を頼る前に早くも捕まってしまった。
「鬼道城に居る他の『門鐘の巫女』たちも上玉だったぞ!」
「おお、そうじゃ!」
「女たちの役目が終わったら、俺たちにくださらぬかな?」
「それは良いな!」
「待て! 城の女は二人だぞ。そうなると二人、足らぬ」
「俺は必ず貰う」
「ずるいぞ、一影!」
「黙れ、二影!」
「喧嘩するな!」
「じゃあ、お前は要らぬのだな、三影!」
「そんなことは言っておらん!」
五人の忍びたちは、いっそう激しく揉め始めた。
それを聞いた桜は、はっとなった。
(他の二人の巫女たちも、すでにこの者たちの手に落ちている)
桜の全身を絶望が走り抜けた。
「うるさいぞ! 黙らぬか、ちびどもが!」
突如、五人の忍びを叱る声が響いた。