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武龍伝  作者: もんじろう
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4

 しかし結局、静香は戦いに敗れ、死んだ。


 もう、何も斬ることは出来ない。


 静香の脳裏に、刀を鞘走らせ、あらゆるものを斬る感触が甦った。


 生きていたときは、何を斬っても満たされなかった。


 また、あの虚しさへ(おの)が身を放り出すのか?


 斬っても斬っても続く地獄の苦しみ。


 それとも、何も斬れず何も感じぬ、死という牢獄を選ぶのか?


「どちらも同じ地獄なら」


 静香が武龍の眼を正面から見た。


「斬る地獄へ戻ろう」


「よし」


 武龍が頷いた。


 ぶつぶつと何かを呟く。


 一瞬で、裸だった静香が紫色の着物姿へと変わった。


 左腰には長刀と脇差しが携えられている。


「まずは約束事を決めておく」


 武龍が言った。


「非道な行いは、けしてせぬこと。もし、行えば私がお前を元の(しかばね)へと戻す」


 静香が頷く。


「お前に頼みたいのは『門鐘(もんしょう)の巫女』(さくら)を守り、その手助けをすること」


「門鐘の巫女?」


「そうだ、すでに二人の巫女が将軍家の手に落ちている」


「将軍家だと?」


 静香の片眉が上がった。


大事(おおごと)だな」


「そんなことで臆するお前ではあるまい」


 武龍が言った。


 確かに静香の口元は(わず)かではあるが、ほころんでいる。


「桜の居場所が常に分かる力をお前には与えてある。眼を閉じ、桜の名を思い浮かべてみよ」

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