表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
武龍伝  作者: もんじろう
37/204

37

「何じゃ、竜丸! わらわに逆らうつもりか! どけ! その女に分からせてやる!」


 竜丸は夜叉姫の両眼の中にある、暴風の如き猛々しさに驚いた。


 しかし。


 何故か、不思議と恐ろしくはなかった。


 泣き虫で、姉に甘えてばかりいた竜丸に、このとき突如として勇気が湧き上がったのだ。


 それは桔梗を守りたいという思いか?


 いや。


 確かにそれも理由のひとつではある。


 竜丸は人が(しいた)げられるのが嫌いであった。


 己の強き力を持って、抵抗できぬ弱者をいたぶるなど、見過ごすことは出来ない。


 確かにそれもある。


 しかし、あれだけ気弱と小諸城の家臣たちに言われ続けた竜丸が、相手が若い娘とはいえ、これほどの気迫を持つ夜叉姫とにらみ合い、一歩も退かないなどとは。


 いかなる成長が竜丸に起こったというのか。


 それは実は、これこそが不思議の理由ではあったのだが、竜丸を脅し、散々に罵声を浴びせる夜叉姫の双眸の奥底に輝くものこそが、竜丸に力を与えていたのだ。


 そう、二人にとっては、まさにこれが運命の出逢いなのであった。




 曇天(どんてん)の下、鬱蒼(うっそう)とした森の木々の間を一人の娘が走っている。


 度々、後ろを振り返っては、不安げな表情を見せる。


 胸のふくよかな双丘が、走り続けた荒い息のため、浅い上下を繰り返す。


 巫女装束であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ