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二日、姉と逢っていないだけで、こんなにも恋しいとは。
竜丸は我が身が引き裂かれんばかりの苦しさに瞳を潤ませ、無駄とは知りながら牢の格子を両手で掴み、顔を近づけた。
刹那。
竜丸の眼前に何者かの顔が突如、現れた。
牢の横合いから跳び込んできたのだ。
「ばあっ!!」
その人物が大声を上げたため、竜丸は腰を抜かして、思わず「わあ!!」と叫んだ。
後ろの二人の巫女たちにも緊張が走った。
慌てて竜丸のそばへと二人が駆け寄る。
「竜丸様!」
巫女たちが竜丸を心配し、その身体に触れようとした瞬間。
「触るでない、女ども!!」
格子の前に立ち、竜丸を脅かした人物が激しい口調で巫女たちを制した。
きらびやかな意匠を施した豪奢な着物を着た少女であった。
竜丸よりは、やや年上か。
細面の顔が、はっとするほど美しい。
胸元まで伸びた黒髪は艶やかに輝く。
大きくぱっちりとした瞳が、ぎらぎらと激しい怒りに燃えていた。