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武龍伝  作者: もんじろう
35/204

35

 二日、姉と逢っていないだけで、こんなにも恋しいとは。


 竜丸は我が身が引き裂かれんばかりの苦しさに瞳を潤ませ、無駄とは知りながら牢の格子を両手で掴み、顔を近づけた。


 刹那。


 竜丸の眼前に何者かの顔が突如、現れた。


 牢の横合いから跳び込んできたのだ。


「ばあっ!!」


 その人物が大声を上げたため、竜丸は腰を抜かして、思わず「わあ!!」と叫んだ。


 後ろの二人の巫女たちにも緊張が走った。


 慌てて竜丸のそばへと二人が駆け寄る。


「竜丸様!」


 巫女たちが竜丸を心配し、その身体に触れようとした瞬間。


「触るでない、女ども!!」


 格子の前に立ち、竜丸を脅かした人物が激しい口調で巫女たちを制した。


 きらびやかな意匠(いしょう)を施した豪奢(ごうしゃ)な着物を着た少女であった。


 竜丸よりは、やや年上か。


 細面(ほそおもて)の顔が、はっとするほど美しい。


 胸元まで伸びた黒髪は(つや)やかに輝く。


 大きくぱっちりとした瞳が、ぎらぎらと激しい怒りに燃えていた。

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