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将軍家は三人の巫女を選び、それぞれに一つずつ鐘を託した。
そして、都より遠く離れた三箇所に、ばらばらに巫女を住まわせた。
これによって、重臣たちの心は落ち着き、日の本復興のために皆で力を合わせることが出来たのである。
時の流れと共に次第に三つの鐘と巫女の存在は忘れられていった。
唯一、代々、鐘の所有を引き継ぐ巫女の一族が、この事実を伝え知るのみであった。
「では将軍家は、その異界の軍勢を用いて天下を手に入れようとしているのですか?」
竜丸の問いに、二人の巫女は頷いた。
「最後の一人が捕らわれれば…」
そう言って、二人の巫女は青ざめた。
「鐘はどこに?」と竜丸。
二人の巫女が突然、押し黙った。
二人で何やら目配せしている。
どうやら、その話はしたくないようだった。
竜丸は二人の意を汲んで、話を変えた。
「では、私はどうして拐われたのでしょうか?」
疑問であった。
二人の巫女たちも、それについては首を傾げるばかりだった。