29/204
29
かつてはとてつもなく厳しく、人の心を持たないと恐れられた頭領も、今や寄る年波には勝てず、何やらしょぼくれた様子だ。
囲炉裏端に片膝立てて座った頭領は、小諸城よりの使者から渡された蛍火の書状を読んだ。
蛍火は、この里の忍びであった。
最近の仕事は、このように少人数の単位で各地の戦国大名に、期間を区切って仕える形が多くなっていた。
「何と!」
書状を呼んだ頭領は血相を変えた。
そこには、小諸城での誘拐の顛末が書かれていた。
蛍火は飛刃の刃によって、死こそ免れたが深傷を負った。
書状には自分の代わりの忍びを一人、小諸城に寄こすようにという要請、そして。
小諸城を襲った忍びたちの死体を検分した結果、分かった正体が「鳳衆」であるということが書かれていた。
「鳳衆」は将軍家「鳳忠久」の従える忍び集団である。
実は頭領はすでに手下による付近の諜報活動から、突如、あり得ざる早さで修復された鬼道城に将軍家と、ごくわずかな手勢、そして「鳳衆」が入城したという情報は入手していた。
鬼道城についても、特に自分たちと敵対する関係でもないため、遠巻きに見張り、随時、対応すると決めたばかりであったのだが。
まさか雇い主のひとつである小諸家と、これほど激しく事を構えるとは予想もしていなかった。




