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竜丸の頭を掴み、無理矢理に下げさせる。
「は、ははっ! 思わぬ邪魔が入りましたもので!」
空怪が脂汗をかき、畳に額を擦りつけ、盛大に許しを乞うた。
「む」
仮面侍が、何かに気づいた。
「空怪、手下はどうした? 飛刃と腕丸は?」
「そ、それが実は…」
空怪が、あわあわと必死に事の顛末を語り出す。
最初は怪訝な表情だった仮面侍の顔が、話が進む毎に露出している部分が赤らみ、覗いている両眼が激しい怒りにぎらぎらと輝き、さらに血走った。
「おのれっ!!」
仮面侍が大喝した。
まるで猛獣の如き大音声だ。
「たかだか小娘一人と小童一人に不覚をとったと申すのか!?」
仮面侍が、さっと立ち上がり、空怪へと突進した。
右脚で空怪の右肩を蹴り飛ばす。
空怪といっしょに竜丸も後ろへ、ごろんとひっくり返った。
仮面侍が腰の刀に手をかける。
「お前に、わしに仕える資格はない! 斬り殺してくれる!」
竜丸は見下ろす仮面侍の狂おしい双眸に、生々しい殺意を見た。
次の瞬間には、本当に空怪が斬られると思った。
そして、その次は自分の番なのだろうか?
竜丸の顔から、みるみる血の気が引いた。
「待て、狂虎」
上座の侍が声を発した。
「その子供は誰じゃ?」
仮面侍の動きが止まった。
すかさず侍に対して平伏し、口を開く。