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腕丸との戦いにかまけているうちに、竜丸を抱えた空怪の姿が消えていた。
腕丸の死体の後方で空間の揺らめきが見える。
「しまった!!」
慌てて蜜柑が駆け寄ったが、中へ飛び込む直前に揺らめきは、かき消えた。
蜜柑は無駄と分かっていながら、弟が消えた空間に何度も手を伸ばした。
その様子を隼人と春馬が戸惑いつつ見つめている。
「竜丸…」
蜜柑が悲しげに呟いた。
竜丸を抱えた空怪は、かつて小諸信竜の父、鬼道信虎の城であった鬼道城の本丸御殿へと転移した。
この城は信虎と信竜が争いとなった折、信虎が命を落とし、その後は主も無く打ち捨てられ、今に至るのだが、どういうわけか荒れ放題のはずの城は立派に修復され、まるで新築したばかりのような雄壮さで辺りを睥睨しているのだった。
あまりの異常な事態の連続に気を失っていた竜丸が、ようやくその両眼を開いた。
「ここは!?」
見知らぬ景色に驚きを隠せない。