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ただ、悲しそうな表情をするのみ。
次に美剣は奇妙斎に「紫雲!」と声をかけた。
桜と笑い合っていた奇妙斎が慌てた。
「みっちゃん! その名前は駄目じゃって!」
「達者で暮らせよ! まだ、こっちに来るのは早いぞ」
「言われんでも長生きするわい! 秘訣は眼福じゃ」
奇妙斎が桜の豊かな胸を細目で、じろじろ見る。
「きゃーーーっ!!」
桜が叫ぶ。
びんたの音と共に奇妙斎が吹っ飛んだ。
「みっちゃん、わし今、死ぬかもーーーーっ!!」
美剣が苦笑し、蜜柑に視線を戻した。
「では、姫。わしを解き放ってくれ。あの世に戻るとする」
「ありがとう、隼人のおじいちゃん」
蜜柑が美剣と自分の繋がりを解いた。
美剣が白煙に変わる。
「隼人。己を磨け」
「うるせー!!」
美剣の姿は次第に崩れ、消えて無くなった。
「さあ」
隼人が言った。
「俺も武者修行の旅に戻るかな」
「ええ!?」
春馬が大声を出す。
「おじいさんに言われたから?」
「ちげーよ!!」
隼人が口を尖らせる。
「元々、武者修行の途中だったろ?」
「そ、そか」
春馬が口ごもった。
「二人とも一度、ボクたちといっしょに小諸城へ来て。お礼もしたいから」
蜜柑が言った。
その視線は隼人から春馬に移り、そこで止まった。
不安げに見つめる。
春馬も蜜柑を見つめ返した。