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少年剣士の言葉に答えた者が居る。
蜜柑の奥襟を引っ張った人物だ。
蜜柑はすぐ側に立つ、その者を見た。
これもまた少年である。
こちらは少年剣士より年下、蜜柑と同じくらいの年齢か。
侍姿で前髪付き。
紐で固定する眼鏡をしている。
色白で小柄であった。
背中に蜜柑が見たこともない四角い箱のような物を背負っている。
箱の両脇から出た革帯に両腕を通し、固定しているのだ。
蜜柑の視線に春馬と呼ばれた少年が気づいた。
「あ、これはね」と微笑む。
「『バックパック』という物で、僕の師匠がくれたんだ。とても便利な」
「ちょっと!!」
蜜柑が春馬の言葉を遮った。
「そんなことより、あの者が危ない!」
蜜柑が少年剣士を指す。
「ああ」
春馬が「そんなことか」という風に答えた。
「隼人なら大丈夫。めちゃくちゃ強いから」
「馬鹿! 相手は腕が八本あるんだよ!」
蜜柑は慌てていた。
虎然の六本腕でも防げなかった腕丸の斬撃を二刀流とはいえ、隼人なる少年剣士がどうやって攻略すると言うのか?
蜜柑は再び、前へと踏み出そうとした。
春馬の手が蜜柑の腕を掴み、それを引き止める。
「黙って見てて。隼人なら相手の刀が十本だって平気だから」
そう言って、春馬は大きく頷いて見せた。
「でも…」と蜜柑。