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「静香よ。お前はこのまま死人として生き続けたいか?」
静香は口角をやや上げた。
「死んでも地獄。生きても地獄。どうせなら斬る地獄と、もう決めている」
「そうか。ならば、死んだ身でこの世を生きるが良い。ただし」
武丸の両眼が光る。
「悪行を行えば、私がお前を元の死に叩き落とす」
「それで、かまわぬ」
静香が頷いた。
「きれいな娘さんは、きっとまたやるぞ」
奇妙斎が茶々を入れる。
桜が思わず吹き出した。
「では」
武丸が言った。
冥に向きを変える。
「終わった?」と冥。
武丸が頷く。
「じゃあ、この大馬鹿を連れて帰るとするか。どうやって痛めつけてやるか考えないとね。武丸、行くよ!」
冥が悲鳴をあげる信虎を鎖で引きずり、門の暗闇へと入っていく。
武丸もそれに続き。
ぴたっと足を止めた。
振り返る。
もう一度、蜜柑と竜丸の顔をじっと見た。
「武丸!!」
すでに暗闇に入り、姿が見えない冥の呼びかけが聞こえた。