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「いや、私はすぐに冥様の世界へと帰らねばならない。姉上には武丸が元気であったと伝えてくれ。死んでいるのに元気とは、おかしな話だが。信竜殿にもよろしくな」
「武丸」
冥が言った。
「正体がばれると本当は、その身体は土くれになる決まりなんだよ。まあ、結局はそれもあたしの、さじ加減だけどさ」
武丸が振り向き、冥に頭を下げる。
「お前、何でも頭を下げたら良いと思ってないかい?」
武丸が右手の人差し指を自らの口の前に立てた。
「わ。しーって? うるさかった? ごめんね。じゃあ、ねーよ!!」と冥。
頬を膨らませる冥を無視して、武丸が一同に向きを戻した。
「おっと」
無法丸が言った。
刀を鞘ごと武丸に渡す。
「こいつは返す」
武丸が刀を受け取った。
「お前には関係なかったにも関わらず、ここまで、よく助けてくれた。礼を言う」
「ああ、気にするな。俺はこういう性分なんだ」
武丸の言葉に無法丸が答えた。
武丸が静香に視線を向けた。